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「西友」が北海道・九州から撤退する納得の理由 業績不振ではなく企業価値の回復が背景に

東洋経済オンライン / 2024年4月21日 12時20分

また、小売店舗としての活性化ができない物件に関しては、他業態や他業種に譲渡するなどして、収益を生む店舗だけを残して再構築していく。この結果、西友の業績は、2023年2月期には売上高6647億円、経常利益270億円(経常利益率4%)となり、国内の有力スーパーとしての存在感を回復したのである。

北海道、九州の事業に関しても、詳しい開示はないものの、イオンやイズミが買う価値があると判断する事業に再構築されたのであり、遠隔地ということもあり優先的にエグジットしたのだろう。

残っている本州事業についても相応の収益性となっていることが想像されるが、物流効率改善や事業改善、M&Aによってさらに収益性を改善できる(企業価値を上げる余地がある)という見通しがあるため、今はまだ売却の時期ではないと判断されているということだ。

これから西友はどうなっていくのか

ここから、今後の西友の行方について妄想してみよう。北海道と九州を売却した後の店舗網をみてみると、南東北、長野は市場性、物流効率からは分離が望ましいようにみえる。現に、セブン&アイのイトーヨーカ堂再構築においては、東北、信州は撤退の対象となったことは記憶に新しいはずだ。

ただ、南東北、長野といった地域での展開に事業シナジーを生み出せる小売プレイヤーは北海道、九州以上に限定的で、合意に至るためには時間が必要かもしれない。やはり、主としては、本丸となる3大都市圏の収益性のさらなる改善に努め、京阪神、中京、首都圏といった分割も視野に入れた交渉を進めることになる。マーケットの規模も大きく、人口減少度も低いこの地域における買い手は数多く存在しているだろう。

北海道、九州を除いた西友の売り上げは5400億円、店舗数では関東に半数以上の135店が集中しており、売り上げではそれ以上の数字を稼いでいると考えられる。この関東の店舗網がどこに行くのかで、業界における覇権を決める首都圏の陣取り合戦の成否が決まることになる。

次の表は関東の主要スーパーの売上を示しているが、西友の売上3~4千億円が業界地図を大きく左右する存在であることはわかるだろう。西友の業績回復を機に、業界の首都圏争奪戦は水面下で本格化するのである。

中井 彰人:流通アナリスト

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