元「日比谷線車両」上毛電鉄でデビュー、なぜ実現? 運転台の仕様が異なり、試行運転を重ね習熟
東洋経済オンライン / 2024年4月22日 6時30分
事業者にとっては、近年のバリアフリー化をスタンダードとする声が多くなり、同社でも800形の導入に伴い、車いす・ベビーカースペースの採用や、扉上にある車内表示器の導入、車内セキュリティ・カメラも設置されており、旅客サービスも向上している。
なお、従来の車両の運転では、マスコン(車両の速度を制御する装置)とブレーキが独立したツーハンドルマスコン方式の運転方法であったが、800形では加減速が一体となった「T」字型のワンハンドルマスコンが採用されている。そのため、「長年ツーハンドルで運転してきているため、ワンハンドルが初採用になったことで、運転上の戸惑いがあると考え、乗務員の習熟には特に力を入れた。何度も繰り返し習熟運転を行うことで、クリアした」。
上毛電鉄に譲渡された03系、あらため「800形」は、同社によって数十年ぶりの新型車両であり期待は大きい。車両の正面にパープルの腰帯、側面はグリーンとレッドの帯を巻く。車体の印象そのものは、日比谷線時代の頃とあまり変わらないが、2両編成であることや、西桐生側の先頭車に、2つのシングルアームを載せているところなど、地方私鉄の良い雰囲気を醸し出している。
運行開始当初は運行範囲や時間帯が限られていたが、4月2日には全線での通常運行を開始した。また、現状は1編成2両のみの導入だが、700形から800形の置き換えも引き続き予定しており、合計で2両編成3本が置き換えになるとのことだ。
03系はなぜ全国各地で活躍するのか
東京メトロ03系は日比谷線での運行終了後に短編成化されて、全国各地の中小事業者に譲渡が行われ、運行されている。北陸鉄道に2両編成4本、長野電鉄に3両編成5本、熊本電鉄に2両編成3本。中でも長野電鉄においては、初代日比谷線3000系も在籍した時期があり、一時的は、初代と2代目日比谷線車両が、信州の地で再会する喜びもあった。
03系が各地に譲渡されている理由は、車両の仕様も影響している。たとえば車両の長さ。1両あたりの車体の長さは18mで、中小の私鉄事業者に適当であるこのサイズの車両は近年減少しているからだ。各地の譲渡先で活躍している03系をめぐって旅をするのも楽しいかもしれない。
このほど、上毛電鉄に譲渡された03系は4例目となり、今後の活躍が期待されている。また、上毛電鉄は4社の中でも、東京にいちばん近い場所にある。さらに日比谷線時代の相互直通先である東武鉄道とも近い存在である。
地下鉄愛好家にとっては、03系に会いたくなったら、いつでも会いに行ける場所として、上毛電鉄が新たな聖地になりそうでうれしく思えてならない。
渡部 史絵:鉄道ジャーナリスト
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