リッチモンド、顧客満足度1位に「なっちゃう」神髄 目指さずとも…要因は"委ねる"から生まれる主体性
東洋経済オンライン / 2024年4月23日 10時30分
「過去には、お客様に向けて『どんなサービスがあったらうれしいですか』というアンケートを実施したこともあります。その結果を受けて当時は前例のなかった消臭・除菌スプレーと、携帯電話の充電器を全ホテルに設置しました」と宗像氏。
「おもてなし」を真面目に語り合う
2023年は、「おもてなし原点会議」という名称で活動し、「コロナ禍でお客様との間に生まれてしまった距離を縮めるために、どういうおもてなしがしたいか」を分析。自分たちが行いたいサービス場面を映した動画を作成し、全ホテルで共有したという。
2024年は「おもてなし継承会議」という名称で活動することになっている。会議名や活動内容も、執行部に選出されたスタッフが話し合って決めているのだ。
他方、「リッチモンドアカデミー」という社内研修においても、現場スタッフが主体となるサービス姿勢が大切にされている。
「最初はお辞儀の角度や言葉遣いなど、いわゆるマナー研修でした。でもだんだんと、『あなたならこういうお客様に対して何ができる、何がしたいか』を場面場面で考えてもらい、『そういうことをしていいんだよ』と背中を押す内容に変わっていきました」
それぞれの顧客に対して最適なものを、最も最前線にいるスタッフ自ら考え、行動できる環境が整備されているのだ。
設備面もまたしかり。たとえば、1995年の開業から導入している自動精算機の使い方も独特だ。訪れるゲストのニーズは、丁寧な接客を希望する人、時間のない人、誰にも接触せずに部屋に行きたい人などさまざまである。
そのため、自動精算機の横にスタッフが立ってゲストを観察。もてなしを希望する人は、あえて自動精算機を使わずにスタッフがカウンターでチェックインし、急いでいる相手には挨拶だけ。接触を避ける人にはほぼ声もかけないなど、個々のニーズを見極め対応している。
「無難なホテル」だから選ばれる
ひるがえって、サービスを受けるゲストにとってはリッチモンドとはどんな存在なのか。
2015年、リッチモンドは「ゲストの本音を聞くこと」を目的とした会員向けインタビューを実施した。24人の募集に対して1000人もの応募があったというその場で最も多かった声が、「リッチモンドは無難なホテル」というものだったそうだ。
「無難というとネガティブに聞こえるかもしれませんが、その意味を掘り下げると、『上司の出張の宿泊先に選んでハズレがない』『知らない土地でも安心して泊まれる』『部屋が狭すぎず朝食がおいしい』『きれいで価格も手頃』……など、ポジティブな意味合いだったのです」と宗像氏。
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