岸田首相、「1勝」と「全敗」で分かれる"天国と地獄" 政権の命運占う「4・28トリプル補選」は苦戦必至
東洋経済オンライン / 2024年4月23日 9時0分
「4・28トリプル補選」の投開票まで残り5日となり、衆院の東京15区、島根1区、長崎3区で、それぞれ各党や政治団体がしのぎを削っている。ただ、いずれも自民の議席だった補欠選挙にもかかわらず、同党は東京、長崎で不戦敗に追い込まれ、公認候補擁立は島根のみ。しかも、ここでも立憲民主の公認候補が先行しており、岸田文雄首相や自民党執行部は「全敗」への不安におののいている。
今回のトリプル補選は、昨年11月に自民党の巨額裏金事件が発覚して以来の初の国政選挙。自民が公認候補擁立を複数区で見送る補選は2002年以来の異常事態となるが、この時は7補選の中で擁立を見送った3カ所も、すべて無所属候補を推薦した。しかし、今回は東京、長崎では他候補の推薦もできず、保守王国の島根でさえも、裏金事件での強い逆風で苦戦を強いられている。
情勢調査では立憲民主公認候補がリード
週明けに公表された大手メディアの情勢調査では、3選挙区すべてで立憲民主公認候補がリードしており、「自民全敗」の場合には、岸田首相(自民党総裁)の責任が問われ、島根での票差次第では、党内に早期退陣論が台頭する可能性もある。その一方で、「立憲全勝」となれば、一部でささやかれていた泉健太代表の交代論は消滅しそうだ。
そうした中、情勢調査通りの「自民全敗」となった場合、岸田首相は「すべて私の責任」と陳謝したうえで、「国民の批判を真摯に受け止め、まずはやるべきことをしっかりやることで責任を果たす」と、政権維持を表明する考えだとされる。
これに対し、自民党内では菅義偉前首相を中心とする“反岸田勢力”が、「次期衆院選を岸田首相で戦うことはあり得ない」と主張する構え。これが党内で常識化すれば、岸田首相が執念を燃やす会期末解散も困難となり、当面、政権は維持できても、9月の総裁選での不出馬・退陣に追い込まれる事態も想定される状況だ。
焦点の島根1区は「自民VS野党」に
今回の3補選で自民を苦境に追い込んでいるのは、岸田政権の「不透明で不誠実な巨額裏金事件への対応」(政治ジャーナリスト)についての国民の怒りの大きさだ。特に、自民の細田博之前衆院議長の死去による島根1区の選挙戦がそれを裏付けている。
同区は、自民が新人で元財務官僚の錦織功政氏(55)を、立憲は同区で故細田氏と長年戦ってきた元議員の亀井亜紀子氏(58)を、それぞれ公認候補として擁立。共産など他党・政治団体が候補を取り下げたことで亀井氏が事実上の野党統一候補となり、「自民VS野党」の形となった。
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