38歳でがん罹患「激務の母」が迷走経て掴んだ人生 東大院卒、外資系コンサルタントの大転換
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 12時0分
2017年に独立起業後、彼女は前職の経験から、業務内容に応じて既存社員の最適な組み合わせを考えるという組織開発モデルを提唱し、支援している。
そのキャリアは一見華やかに見えるが、彼女自身は小学生時代から劣等感がずっと強かった。その原点をたどれば、担任教師の間違いをとりたてて悪意もないまま指摘しては、煙たがられていた小学校5年生の頃にさかのぼる。
ある日登校すると、担任から「今日は図書館に1日いなさい」と言われた。後日、彼女がいない教室で、その担任が「真衣さんのリーダーシップについて、みんなで悪い点を挙げましょう」と、同級生たちに呼びかけていたと知る。
「その後、私立の中高一貫校に進学したんですが、教室では目立ってはいけないと自分の存在を消しつづけました。大学入学後も自分をうまく出せず、あまり楽しくなかったですね」(真衣さん)
「能力」のひとつの証しである学歴と幸せの距離は遠かった。
非科学的な整体師の「断言」にハマッた2年間
実は、がん告知を受ける前から、真衣さんは左胸の痛みと葛藤し続けていた。長男を30歳で産んだ頃から乳腺炎に苦しんだ。子どもが飲める量以上に母乳が作られるゆえに胸が張り、やがて硬くなって肥大化。発熱と発赤を繰り返しては強く痛んだ。
36歳で長女を出産後はさらに悪化。炎症を起こすと授乳できず、自力では母乳を排出できない。そのたびに大学病院に行き、3時間近く待たされては、わずか5分ほどで溜まった母乳を出してもらう。その繰り返しだった。
やっと診察を受ける際に生活上の注意点などを尋ねても、親身な助言は受けられず、真衣さんにはうつうつとした気分だけが積み重なっていった。
そんな頃、初診時から約2時間も話を聞いてくれる人がふいに現れる。友人から紹介された女性整体師だった。
「婦人科系トラブルは、母親との確執の表れであることが多いです。お母さんとの関係をよくしない限り、何度も繰り返します。でも、今日できる限りそうした悲しみや怒りを含めて解毒しておいたので、身体は軽いはずですよ」
整体師は親身になって彼女の話を聞いてから、そう断言した。
普通の心身状態なら、真衣さんも整体師とは二度と会わなかったはずだ。だが、乳腺炎治療の終わりが見えず、実際に母親との長い確執も抱えていて、ワンオペ育児と会社運営にも悪戦苦闘していた当時の彼女には、この非科学的な断言がむしろ心に深く刺さった。
「当時の私の心に巣食っていた『答えの見えない葛藤を一日でも早く終わらせたい』という強い欲求が、整体師の断言によって激しく揺さぶられました。私の話をこんなに丁寧に聞いてくれる人だから信頼できるって……」
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