銀行が苦悩「上げられない住宅ローンの変動金利」 客離れ懸念、融資手数料の「負の側面」が顕在化
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 5時0分
一例がauじぶん銀行だ。4月時点の最優遇変動金利は0.319%。加えて、電話回線や新電力などKDDIグループのサービスを利用すれば優遇幅はさらに拡大し、金利は0.169%まで下がる。会社側は公表していないが、引き下げに伴う金利収入の減少分は、これらのサービスを提供するグループ会社が事実上負担する戦略のようだ。
住宅ローン企画推進部の吉永圭吾マネージャーは「グループシナジーを活用して、使いやすい金利を提供したい」と話す。実際、KDDIグループのサービスを利用し、優遇後の金利が0.3%を切る利用者は少なくないという。同行にとって住宅ローンは、金利収入を得るというよりも、むしろグループの「経済圏」に取り込むための呼び水となっている。
引き返せない融資手数料の罠
加えて、銀行が融資手数料に傾倒することで、金利の上昇圧力が弱まっている状況も見て取れる。
「このタイミングで引き下げに来たか」。ある銀行の住宅ローン担当者は虚を突かれた。日銀がマイナス金利解除を発表した翌営業日に当たる3月21日、SBI新生銀行は住宅ローンの変動金利の優遇キャンペーンを打ち出した。4月以降の新規申し込みや借り換えを対象に、最優遇金利を従来の0.42%から0.29%まで引き下げた。
一方で、同行は預金金利を3月下旬から引き上げている。資金調達費用がかさむ中で住宅ローン金利を引き下げれば、利ザヤの縮小は不可避だ。それでも同行が最安値水準の金利を提示した背景にあるのは「融資手数料」だ。
かつての住宅ローンは、利用者が保証会社に保証料を支払う方式が主流だった。近年は保証料を取らない代わりに、銀行に数十万から百万円程度の手数料を支払う融資手数料型が普及。手っ取り早く収益を上げられるとあって、今ではほとんどの銀行が保証料型から手数料型へと軸足を移している。「手数料型を導入した途端に、不採算だった住宅ローンの収益性が改善した」(地方銀行幹部)。
前述のSBI新生銀行の場合、最優遇で0.29%の低金利を享受するには、住宅ローン契約時に借入額の2.2%を一括で支払う必要がある。5000万円のローンなら手数料は110万円だ。赤字覚悟で金利を下げる代わりに、住宅ローンの申し込み件数を増やして融資手数料を稼ぐもくろみが透ける。
融資手数料への過度な依存は諸刃の剣でもある。手数料型の採用に消極的なある銀行の首脳は「手数料型は『麻薬』だ。一度導入したら最後、収益を維持するためにローンの実行件数を追い求めないといけなくなる」と話す。
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