「著名人の詐欺広告」で問われる"無料ネット社会" 生成AIが生み出すコンテンツは著作権違反か
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 9時0分
新しいサイトやサービスを無料で立ち上げて、人が集まりさえすれば広告モデルで事業化できる。実際それでFacebookは大学生の出会い系ツールだったのが、世界の交流を支える一大インフラとなった。Xは見知らぬ人同士を趣味嗜好で結びつけコミュニティが自然に生まれるグローバルな広場となった。
広告モデルがある無料サービスだから、つながることができ、ビジネスをアイデアひとつで生むこともできた。広告から支えられた自由を、広告がいま侵そうとしている。
生成AIが生み出すコンテンツは著作権違反か
詐欺広告は「犯罪」なのでわかりやすい。だが記事(ネット広告を荒らす「悪意」に社会は勝てるのか)で説明したMFA(広告目的のサイト)などの得体の知れないサイトが広告収入を収奪することが犯罪かと言うとそうとも言えない。生成AIが生み出すコンテンツは著作権違反とは言えないのだ。過度なポルノグラフィーでもない。フェイクニュースとも言えない。
ネットにも規制が必要との声が出てきている。実際欧米では規制する法律も出てきた。だがそれらは詐欺のような犯罪や、個人情報の取得を制限することはできても、MFAは規制できないだろう。メディアのふりをしている、と書くと犯罪者のようだが、メディア企業じゃなくてもメディアとして振る舞うこと自体には何の文句も言えない。私だってMediaBorderという個人メディアを運営している。MFAを規制されたら私もとやかく言われかねない。法的には「悪」とは言えないのだ。
また、スポーツ紙や芸能誌のデジタル版がさかんに送り出すコタツ記事。あれはMFAとどこに違いがあるだろう。コンテンツを人間が書いているか、AIが生み出したかの違いがあるだけで、広告収入を得るために記事を載せるのだから変わらないと言っていい。そのうち、テレビの前に置いたスマホで番組を録音し、あとは自動的に炎上しそうなコメント部分を抜き出して適当な写真を添えて自動的に記事を公開する仕組みでコタツ記事の量産を始めるスポーツ紙も出てくるかもしれない。理論上は十分可能だ。
MFAは無料広告モデルの行き着くところをあらわに示してしまったのかもしれない。コンテンツなんて人間が作らなくてもメディアは成り立つと。生成AIの登場がその流れを決定づけた。オッペンハイマーが原子爆弾を開発したら世界のありようがすっかり変わったように、生成AIがネットの様相を変えようとしているのだ。
無料世界と有料世界の境界
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