中国電池CATL、「超長寿命」の蓄電システムを開発 最大1万5000回の充放電可能、5年間は劣化なし
東洋経済オンライン / 2024年4月25日 8時20分
世界最大の電池メーカーである中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は4月9日、リン酸鉄系リチウムイオン電池を用いた超長寿命の蓄電システムを開発したと発表した。
【写真】中国・山東省に建設された蓄電システムの実証実験施設。CATL製の電池を採用している
CATLが「天恒(ティエンハン)」と名付けた新型蓄電システムは20フィートコンテナに似た外観で、1ユニット当たり6.25MWh(メガワット時)の容量を持つ。
その最大の売り物は寿命の長さだ。CATLの実験データによれば、天恒蓄電システムに組み込まれる電池セルは最大1万5000回の充放電が可能であり、電池の劣化によるシステムの容量減少が5年間生じないという。
充放電回数が25%増加
蓄電システムは、風力や太陽光などの再生可能エネルギーで発電した電力を一時的に蓄える装置で、需要が急拡大している。
中国電力企業連合会のデータによれば、2023年に中国で新たに稼働した電池式の蓄電システムは過去最多の486カ所、総蓄電容量は36.81GWh(ギガワット時)に上った。
CATLは、1万2000回の充放電が可能なリン酸鉄系リチウムイオン電池を用いた蓄電システムをすでに生産している。天恒蓄電システムは、それを25%も上回る充放電回数を達成した。
蓄電システムには、EV(電気自動車)用の車載電池よりもはるかに長い数十年の耐用年数が求められる。それだけに、電池セルの長寿命化は蓄電システムの運用コスト低減に直結する。
「リチウムイオン電池を用いた蓄電システムは、(昔からある)揚水発電式の蓄電システムに比べて(容量当たりの)初期投資が大きく、電池セルの寿命にも限りがある。そのため短期的には、電池式のコストが揚水式を下回るのは困難だ」
中国電力科学研究院の首席エンジニアを務める惠東氏は、2023年6月に開催された電池業界の国際フォーラムでそんな見方を示していた。
電池式の蓄電システムが抱えるもう1つの課題は、(電池セルの異常過熱による)発火リスクの高さだ。惠氏によれば、蓄電システムの火災事故は公に報じられただけで60件を超えるという。
イーロン・マスク氏も必要性強調
だが、電池式の蓄電システムはコンパクトで設置場所を選ばないという、揚水式にない大きな利点がある。再生可能エネルギーの導入が世界的に加速する中、そのニーズに対応できるのは電池式だけなのが現実だ。
アメリカのテスラは、EVとともに蓄電システムの開発・生産も手がける。同社のイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は事あるごとに次のように語り、蓄電システムの重要性を訴えている。
「再生可能エネルギーの主力は太陽光と風力だが、太陽が(24時間)照らし続けることも、風が吹き続けることもない。人類社会全体が再生可能エネルギーに移行するためには、約200TWh(テラワット時)の蓄電システムが必要だ」
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は4月9日
財新 Biz&Tech
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