「早い者勝ち」が実は通用しなくなっている背景 私たちは「優先されるため」にいろいろしている
東洋経済オンライン / 2024年4月25日 17時0分
何に価値を見出すかは人によってさまざまだ。だから誰のものかを決めるルールは、そのさまざまな意見のどれか1つに報いるものだと言える。
昔ながらの早い者勝ちは、列の先頭を確保して辛抱強く待つ時間のある人に報いるシステムである。時間は誰でも平等に持っており、誰にとっても1日は24時間しかない。これに対して遅い者勝ちは、お金に報いることが多い。このシステムは、時間はないがお金はある人、正確に言えば他人の時間にお金を出す用意のある人に有利になる。
企業が設けているそれぞれの「所有」のルール
このことを理解していれば、世界で成功している企業が顧客にどんなサービスを提供しているか、解明できるようになる。たとえばスターバックスはモバイルオーダーが優先されるアプリを提供している。ユナイテッド航空は頻繁に利用するロイヤルカスタマーを優先搭乗させている。ウォルマートは買い物が「20アイテム以下」の人のための列を用意している。
長続きする企業は従来の早い者勝ちのルールを少しばかり調整する術に長けており、利用者に時間、または、お金またはその両方を使わせる、それも喜んで使わせることができる。
所有権の設計は、チョコレートアイスとバニラアイスのどちらを選ぶか決めることとはわけが違う。そこには重要な価値観が懸かっているのだ。経済のそこここで、希少資源の所有者は所有権の影のルールをひそかに変えてきた。早い者勝ちから遅い者勝ちへ、時間からお金へ、平等から特権へ。こうした変更はどれも所有者の利益にはなっても、必ずしもあなたの利益にはならない。
こうして選択されたルールは永続的なものではないし、必然でもない。それでも、現代の生活に必須のモノを巡る人々の相互作用の中で、消費者として、また市民としての行動を規定することになる。
マイケル・ヘラー:コロンビア大学教授
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