「景気回復の実感」ないのに株価が上がる納得理由 株価は再び上昇トレンドに向かっていくか
東洋経済オンライン / 2024年4月25日 6時50分
私たちにとって景気が良いと実感できるのは、私たちの収入が増えたときでしょう。政府が公表する経済指標で、いくら景気が良いと言われたところで、実際に私たちがもらう給料が増えてきて、例えば、これまでよりわずかでもお値段が高いものを買うようになったり、普段は行けないちょっと贅沢な旅行に行けるようになったりしなければ、ひとごとに感じてしまいます。
日本労働組合総連合会(連合)が4月4日に発表した春季生活闘争(春闘)では、2024年の賃上げ率は5.24%(4月2日時点)となりました。1991年(5.66%)以来の上昇です。春闘とは、労働組合が月給などについて企業側に要求して、交渉、そして決定することです。春闘で決まる賃上げ率でその年の賃金が決まってくるわけです。
下図の棒グラフは毎年の賃上げ率の推移です。これに対して、日経平均株価は毎年の年末値となっています(2024年は年末になっていないため、直近の値で表示)。このような賃上げ率と株価の連動から見て、今年の株高の背景には賃上げがあることがわかります。
こうした高い賃上げ率のわりに、私たちの収入に余裕が感じられないケースが少なくありません。それには次にあげる3つの理由があります。①中小企業の賃上げ率は大企業に及ばずに4%台で、(主に、大企業などを対象とした)メインの情報として公表される数値ほどの賃上げを享受できていないこと、②40歳代などの支出がかさみやすい年齢層では昇給額が増えにくいケースがみられること、そして③賃金の伸びが、物価高の勢いに追いついていないこと――です。
厚生労働省が4月8日に発表した勤労統計調査から、1人当たりの賃金は、物価を考慮した「実質」賃金で前年同月比1.3%減と、23カ月連続でマイナスでした。「名目」の賃金は増えているなか、それ以上に物価が上がることで、「実質」で見た私たちの購買力は低下しています。
景気の実感とGDPに乖離がある要因
このような実質と名目の違いは賃金の話だけでなく、景気全体に関する私たちの実感とのズレに大きく影響しています。
「日本経済全体の景気動向を把握するためにはGDP(国内総生産)が適しています」と日銀のウェブサイトに記載されています。景気を見る指標には、鉱工業生産指数など様々あります。しかし専門的な詳細はわからなくても、多くの読者にとってGDPは経済全体を代表する指標とイメージする方も少なくないでしょう。GDPを簡単に言えば、国内で生産された価値で、商品などの販売額から、原材料などを差し引いた金額のことです。
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