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南海電鉄30000系、登山する特急「こうや」の本領 平坦・山岳両方の区間を行き来する高野線の顔

東洋経済オンライン / 2024年4月26日 7時30分

高野線の特急の途中停車駅は新今宮、天下茶屋、堺東、金剛、河内長野、林間田園都市、橋本。河内長野は近鉄長野線、橋本はJR和歌山線が乗り入れる。りんかんは高野線が紀ノ川を渡る手前の橋本が終着駅となる。

こうやは橋本から先、真田昌幸・信繁(幸村)親子ゆかりの九度山を過ぎ、標高535mの極楽橋まで距離19.8kmの単線区間を上っていく。途中停車駅はないが、行き違いのための運転停車が設定されている。同区間には22000系ズームカーを改造した観光列車「天空」も走っている。

終点の極楽橋駅では、ケーブルカー(鋼索線)に乗り換えて高野山に向かう乗客が大半だ。こうやの行き先表示も「高野山」の文字が大きく、「極楽橋」は控えめ。鋼索線の終点、標高867mの高野山駅の駅前からは、専用道路を通って金剛峯寺・奥の院方面へ向かうバスが出ている。

空海が開いた真言密教の聖地、高野山を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」は2024年で世界遺産登録20周年。とくに最近は日本の伝統や文化財に関心が高い外国人観光客の姿が目立っている。

30000系の先頭車は非貫通型。先頭部の窓は中央に大型の曲面ガラス、両サイドには側面に回り込むガラスを配した構成で、乗務員室後ろの席からは前面の「展望」を楽しむことができる。4両編成の極楽橋方が1号車、難波方が4号車で、短い編成ながらパンタグラフは全部で4基搭載。一方、乗降口は各車両前後どちらかだけにある。

車内は2+2列のリクライニングシートが並ぶ。側面の窓もシート2列に対して1枚と大型で眺望がいい。2号車に飲料自動販売機、3号車にトイレや洗面所がある。かつては2号車にサービスコーナーがあったが、1999年の改造時に撤去された。3号車に設置されていたカード式公衆電話も現在はなくなっている。

「高野線に新たな観光特急」

高野線の三日市町までを平坦区間、三日市町―橋本間は准山岳区間と呼ぶ。橋本―極楽橋間が山岳区間で、とくに高野下―極楽橋間は最高50‰・半径100mの急勾配・急曲線が続く。

そのため、30000系は1両の車長17m、抑速ブレーキ、すべての車両にモーターが付いた全電動車、といった山岳区間対応の特徴がある。ただ、モーター自体は南海本線の特急サザンの指定席車両10000系と同じタイプだという。

先頭から2両目(2号車)の極楽橋寄りの台車にはレールとの間にアルミナ粒子を噴射する装置がある。運転台中央にスイッチがあり、運転士が手動で操作をして、勾配を上る際に車輪の空転を防止する。

同社運輸車両部の課長補佐、泰中直樹さんは「平坦区間では最高速度の時速100kmで走行し、山岳区間ではちゃんと登坂できるというのが30000系の大きな特徴」と話す。「そもそも車長が17mと短いうえに、トイレなどの設備も設置しているので床下にはさまざまな機器を詰め込むように配置してある」と説明する。

南海電鉄は「世界遺産高野山への更なる誘客強化策として顧客体験を向上させるコンテンツを充実させることを目的とし、2025年度を目標に高野線に新たな観光特急車両を導入する計画」と公表している。高野線に「新たな顔」が加わることで30000系にも改めて注目が集まることになりそうだ。

橋村 季真:東洋経済 記者

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