AIは欧米諸国の「知能劣化」を加速させるのか E・トッド「民主主義」の終わりとその先の希望
東洋経済オンライン / 2024年4月27日 21時0分
しかし、研究者の立場から見れば、ChatGPTは数秒で平均的な研究者より少し程度の低い答えを出します。つまり、知識としては、やや後進的な段階なんです。私の推測では、世界中の誰もがChatGPTを大量に使用することで、見かけ上の加速は生まれると思います。しかし、実際には減速です。それは研究を減速させるからです。
人工知能に世界中が熱狂しているのは知っています。人工知能が私たちの生活を変えるということですね。そうです、ChatGPTは私たちの生活を変えるでしょう。でも、それは良いことでもなければ、最悪なことでもないのです。しかしもし、ChatGPTが存在しなかったら、私たちはより悪い状況に陥っていたことでしょう。
そして、私がとくに興味を惹かれるのは、人工知能の話がこのタイミングで出てきたことです。今の時点で西洋世界には、生まれつきの知能の低下が見られます。欧米諸国、とくにプロテスタント諸国では、IQが低下しており、高等教育の水準もどんどん下がっています。私が今話しているのは西洋のことです。インドのような国のことではありません。
生まれつきの知能の低下と人工知能の出現が組み合わさって、生来の知能は劣化版となりつつあります。むしろ「悪化版」と言ったほうがいいかもしれません。しかし、これは非常に個人的な見解です。これは私の研究のメインテーマではないからです。
人類には、「歴史」の感覚が必要である
――もしAIが人間の知性を抑圧したり劣化させたりするものだとしたら、AIが進展した世界の人間社会はどうなっていくでしょうか。また、私たちが追い求めたいと願う、自由で民主的な世界の実現はより困難になると思いますか。
どう言えばいいのでしょうか。でも何よりもまず、私たちは謙虚でなければいけません。
私たちは「歴史とは何か」という感覚を取り戻さなければなりません。西洋思想や標準的な西洋イデオロギーの中心的な問題点の一つは、歴史意識の驚くほどの低下です。
私たちは、もはや長期的な視点で物事を考えなくなりました。「自分たちがどこから来たのか」「何を生き延びてきたのか」「何を成し遂げてきたのか」といったことを考えるのをやめてしまいました。
ある種の健忘症のようなもので、おそらく第2次世界大戦以降の貧困状態から裕福になったことのショックが容赦ないほど大きすぎたのでしょう。
まさしく、インターネット通信が可能で、豊かな都市生活への移行はショックが大きすぎました。そのため、私たちはかつての自分たちとの接点を失ってしまったのです。
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