34年ぶりの円安をなんとか止める方法はないのか 「もしトラでドル安円高」では気分も晴れない
東洋経済オンライン / 2024年4月27日 8時30分
しかるに、円安是正の希望の星が「もしトラ」くらいしかないと考えると、さすがに暗澹たる気分になってくる。4月23日には、麻生太郎自民党副総裁がトランプタワーを訪れ、トランプ氏と旧交を温めたそうだ。大いに結構なことながら、「保険は掛け捨てが望ましい」とだけ申し上げておこう。
それではこの円安、どうやったら止められるのか。いや、もちろん為替介入というオプションはある。しかるに今のようにズルズルと円売りが進む局面においては、下手な介入はかえって投機筋の参入を招き、「衆寡敵せず」となりかねない。円買い介入の原資は、1.2兆ドル規模の外貨準備に限られている。1992年のポンド安局面では、英国の当局がジョージ・ソロス率いるヘッジファンド軍団のポンド売りに敗退した故事を忘れてはなるまい。
また日米金利差が問題だからと言って、ここで日銀が金利を上げられるかといえば、それはもちろん無理筋である。そして「植田日銀」は、「サプライズ」を好んだ「黒田時代」とは正反対に、市場に対する丁寧な説明が「売り」である。3月に異次元緩和を解消したのだから、しばらくは様子を見るのが金融政策の王道というものであろう。
そんな八方ふさがりに見える状況下で、最近になって囁かれ始めたのが「レパトリ減税」の可能性である。企業や個人が海外に保有する資金を、国内に戻すことをレパトリエーションと呼ぶ。
2005年にはアメリカのジョージ・W・ブッシュ政権が、企業の海外利益を国内に送金する際の税率を35%から5%に引き下げる減税を1年限りで実施した「本国投資法」の事例がある。それで実際に本国送金が増えてドル高になったし、そのときの送金はかなりの部分が自己(自社)株買いに使われた。従って株価も上昇するというオマケもついた。
もし「レパトリ減税」導入でも効果は限定的
似たようなことを、2024年度の税制改正に盛り込んではどうか。差し当たって6月に取りまとめられる「骨太方針」(経済財政運営と改革の基本方針)において、「日本企業が海外で得た利益の国内還流策」が盛り込まれるかどうかが注目点となる。
日本人や日本企業が海外で得ている収益は、国際収支統計では「第1次所得収支」として計上されている。2023年(暦年ベース)で34.9兆円もあるが、その大部分は海外に蓄えられていて、円転されることが少ない。その一部だけでも日本に送金され、賃上げの原資や国内投資に充てることができれば、国内経済の浮揚につながるし、円買いが増えて結果的に円安是正も進む。一石何鳥にもなる妙手ということになる。
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