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40歳過ぎたら下り坂「残りの人生をどう生きるか」 稲垣えみ子×中村医師「手放すことは怖くない」

東洋経済オンライン / 2024年4月29日 12時0分

考えてみると、お金を使う楽しみって、新しい服とか踊り炊きの炊飯器とか、欲しいモノを買うときはうれしい。でも、そのうれしさは持続しなくて、次にまた欲しいモノが出てくる。結局、どんなにお金やモノがあっても足りないばかりか、失う恐怖のほうが増えていくんですよね。

中村:確かにそうかも……。

稲垣:あと東日本大震災の原発事故を機に、家電製品を1つひとつ手放していったことも自分の価値観を大きく変えました。それまでずっと必需品だと信じて疑わなかったものが、実はなくても平気だと気付いた。そのことがどんな娯楽よりも爆発的に楽しかったんです。

中村:モノがない暮らしが思った以上に楽しかった?

老後って怖いどころかすごく楽しい

稲垣:「ない」ということが怖くないんだ、むしろそれまでずっと使っていなかった自分の中の工夫する力や、人と助け合う力が目覚めていくんだっていうことが、すごく楽しいというか、人生の展望がひらけた感じ。

だって「ない」ことが楽しくて、いろんなことをなくしていった最後の着地点に「死」というゴールがあるんだったら、老後って怖いどころか楽しいことばっかりじゃないですか。

中村:人生のゴールを見据えてどう過ごすかを考える。それって難しいけれど、大切なことですよね。

稲垣:中村先生はご著書で、余命を知った患者さんが、死ぬまでの間にこれをしておくんだと、オロオロするどころか、むしろ周囲が驚くほどビシッと目標を定めて人生をまっとうしていく姿を紹介しています。死を前提にすると、どう生きるかに迷いがなくなる。読んでいて、本当にそうだなと納得しました。

中村:本当であれば、終末期を迎えるもっと前から、「死ぬまでの人生を、どうやって過ごしていきたいか」を考えられたらいいんですけれど。稲垣さんのように、年を取ることが怖くないって思えるような暮らしができたら、きっとみんな楽になると思うんです。

稲垣:そうですね。私はたぶん、今「長い終末期」を生きているんだと思います。

中村:でも、40歳で死に向かうと気付いた稲垣さんのようにはいかなくて、多くの人は「これから先は下りなのか」と思って、暗くなってしまいそう。

稲垣:確かに、「人生がもう半分済んだ」と考えたら寂しいですよね。でも考えようによったら、下っていくってすごくラクで自由じゃないですか。

ずっと上っていくってしんどいですよ。競争社会の中で負けて転落しないように努力し続けなきゃいけないって、ある意味地獄です。その競争を終えてもいいんだ、違う価値観を見つけていいんだって思えたことは、私にとっては希望でしたね。

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