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「DV・売春・クスリ」彼女がどん底から見た"光と影" 不適切にもで話題、河合優実主演「あんのこと」

東洋経済オンライン / 2024年4月29日 12時30分

入江監督自身も「2020年から2021年にかけて社会を覆っていた“あの空気”を忘れないように記録しておきたい」と、その思いは一緒だった。そこでモデルとなった女性について入念なリサーチをはじめ、彼女の人生にとことん向き合いながら、何度も何度も書き直しながら脚本を紡ぎ出した。

そこで決めたことは「この子をかわいそうな存在として描くのはやめよう」ということ。たとえ壮絶な人生を送っていたとしても、彼女にだって楽しく豊かな時間があったに違いない。だったら彼女の人生と併走し、その体温を身近に感じようとすることが必要なのではないか。

そしてそれは主演の杏を演じた河合優実とも共有していたことだった。実際の事件をもとにした作品ではあるが、実在する人たちに失礼のないように描き出すことを第一とし、キャスト・スタッフともに悩みながら、終始誠意をもって、覚悟をもって、映画づくりに向き合った。

「河合優実さんという俳優の肉体を借りて、モデルとなった女性が向き合っていた世界を、皆で一緒に再発見していきたかった」という入江監督とともに本作に向き合った河合。

彼女自身、「この役と、主人公のモデルとなった女性を自分が守る。絶対に守らなきゃと、まず心に決めました」と語り、「彼女の人生を生き返す」という言葉を頼りに、一歩ずつ、一歩ずつ、杏の感情を探っていった。

登場人物をリスペクトして寄り添う

撮影は可能な限りストーリーに沿って進められ、またスタッフにも、カンヌ映画祭でカメラドール特別表彰を受けた『PLAN75』のスタッフが多数参加。ドキュメンタリータッチで映し出される画面や、わずかな光の変化などから、杏という女性のわずかな感情の揺れを繊細にすくい取り、登場人物の心情に寄り添っている。

「杏の尊厳を全力で守る」というつくり手たちの誠実な思いに貫かれた本作。杏の激しい傷に痛みを感じながらも、それでもなんとかその傷口をそっと包み込もうとするような、そんな優しさが胸に迫る。

壬生 智裕:映画ライター

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