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IHIで絶えない「品質不正」、職場風土の大問題 エンジン「燃費データ」を40年にわたり改ざんか

東洋経済オンライン / 2024年4月29日 7時0分

だが、40年にわたるデータ改ざん、そして前回の航空機エンジンの品質問題から5年。経営陣が不正の実態を把握するまで、あまりに時間がかかったと言わざるをえない。

コンプラ意識をグループに浸透させられず

盛田副社長は、「今回のような長い間ずっとやってきたことはなかなか言葉に出せない。どうやって従業員が安心して言えるようにするか。その仕組み作りが必要」と話す。IHI社員に取材をすると、「過去に買収した企業など、グループ全体への意識改革が行き届いていないのが実態」という声も上がる。

今回不正が発覚した2つの工場は、もともと新潟鐵工所のものだ。東証1部上場の名門企業だったが2001年に倒産し、事業を切り分ける形で、2003年にIHI(当時は石川島播磨重工業)へ原動機事業が承継された。

その後、2019年にIHIグループで原動機を扱う複数の会社を再編し、IHI原動機として再出発している。「IHIによる管理体制は強まったものの、会社の母体となった新潟の旧体制とIHIの新体制ではいまだに距離があり、適切なコミュニケーションが取れていなかったのではないか」(同社員)。

特別調査委員会による詳細な調査はこれからだが、会社側は今回の問題の背景として「コンプライアンス意識の欠如」や「職場風土の問題」を挙げている。グループ全体に深く根差す問題だけに、再発防止策の策定は一筋縄ではいかないだろう。

IHI原動機の売上高は740億円(2023年3月期)、船舶向けエンジンはその5割を占める主力事業だ。同社は近年、赤字と黒字を行き来しており、2023年3月期は18億円の営業赤字だった。

会社側は、「今回書き換えがあった燃費消費率は、エンジンの性能を示すものであり、安全性に直接影響する数値ではない」(盛田副社長)とするが、国交省はNOx(窒素酸化物)規制の順守を確認するまで、IHI原動機への証書交付を停止した。事実上、エンジン出荷が停止する見通しで、業績への悪影響は避けられないだろう。

顧客対応については、過去に出荷したエンジンの交換はせず、顧客ごとに補償の交渉を進めていくものとみられる。今後の補償費用など決算への影響については「精査中」とし、明確なコメントは避けた。

2024年3月期は690億円の赤字に

IHIのグループ全体の売上高は約1.3兆円で、IHI原動機が占める割合は5%程度にすぎない。しかし、IHIグループにとって、今回の品質不正発覚のタイミングは最悪だ。

IHIは昨年、国際共同開発の航空エンジンプロジェクトで約1600億円もの巨額損失を計上、5月8日に公表する2024年3月期決算は690億円の最終赤字に転落する見込みだ(詳細は「IHIの過去最大赤字を招いた『割に合わない』契約」)。

今後は国の防衛予算が膨張する中で、防衛・宇宙分野などでの受注や投資拡大が見込まれる。IHIは、日本、イギリス、イタリアで進める次期戦闘機の国際共同開発プロジェクトに、戦闘機用エンジンの担当企業としても参画する。

巨額赤字からの再起をかけるタイミングで品質不正の問題が再燃したことは、顧客の信頼や生産・開発現場の士気を大きく損なう事態にもつながりかねない。子会社の不正の代償は決して小さくはない。

秦 卓弥:東洋経済 記者

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