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JR九州の新列車「かんぱち・いちろく」何が違う? 座席や窓など随所に「脱・水戸岡デザイン」

東洋経済オンライン / 2024年4月29日 6時30分

デザイナー交代の真相は?

これまでのJR九州の観光列車は工業デザイナーの水戸岡鋭治氏が一手にデザインを引き受けてきた。観光列車だけでなく新幹線、さらには高速船、駅舎に至るまで大半のデザインを担当し、JR九州の「顔」ともいえる存在だった。とりわけ「ななつ星」はアメリカの旅行雑誌で3年連続世界一に選出されるなど、世界的にも評価が高い。それだけに新デザイナーの起用は驚きでもあった。

デザイナー交代の理由は公式的には水戸岡氏の年齢によるものだ。水戸岡氏は1947年生まれの76歳。2022年10月にななつ星がリニューアルされたが、その仕事の際に水戸岡氏は「私の年齢からいって、今回が最後の仕事」と話していた。古宮社長は「水戸岡さんとは30年以上のご縁やお付き合いがあるが、いつかは変わるときが来る」としたうえで、「今回がそのタイミング」と述べた。ただ、水戸岡氏はななつ星リニューアル後も仕事を続けており、現在はJR北海道の観光列車のデザインを「最後の仕事」として取り組んでいる。

いっぽうのイフー。同社の八幡秀樹社長は古宮社長から「由布らしい列車を造ってほしい」と頼まれたものの、なにしろ初体験の仕事である。JR九州のスタッフたちとの間でデザイン会議が何十回と行われたが、「最初は何もわからずご迷惑をおかけした」と明かす。たとえば、車両の基本的構造を踏まえずに車体側面に占める開口部(窓)の面積を大きく増やしてしまったこともあったという。

不安とプレッシャーにさいなまれる日々。だが、ある日、八幡社長が会議の合間にトイレに入ったとき、会議に参加している若いエンジニア同士の会話が聞こえてきた。「2号車の仕事は大変だね」「でも完成すれば、その達成感はたまらないよね」。八幡社長は彼らに背中を押されたように感じたという。

新たな観光列車に使われる車両は2023年10月に「いさぶろう・しんぺい」として最後の乗車ツアーを行った後、すぐに客車内の改装作業に着手。年が明けた2024年1月頃から内装作業を開始し、なんとかゴールデンウィーク前の運行開始に漕ぎつけた。

デザインは「ナチュラルモダン」

こうして完成した車両のデザインは、これまでのJR九州の車両とは明らかに違っていた。水戸岡デザインの車両を「豪華絢爛」と言い表すなら、新たな観光列車は「洗練」という表現がぴったりくる。それを八幡社長は「ナチュラルモダン」と評する。「私たちがデザインしたというよりも、JR九州の各部署の方々と数十回も会議をして、古宮社長にも何度も足を運んでいただいて完成したデザインです」。

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