「テーマパーク化した大学」を経たZ世代の不都合 先生と生徒が共犯でうみだす「いい子症候群」
東洋経済オンライン / 2024年5月1日 11時0分
「大学のテーマパーク化」というフレーズがある。大学の現状を揶揄し、学生が大学に遊びにきている、といった意味で用いられることが多い。とはいえ、これは最近の傾向というわけでもなく、老若男女問わず、「大学で勉強していた」と言う人のほうが少数派ではないだろうか。
企業組織を研究する東京大学の舟津昌平氏は、Z世代が身を置く現代の「テーマパーク化した大学」の意味合いの変化を、ビジネスの観点から指摘する。
本記事では、舟津氏の著書『Z世代化する社会』より一部抜粋・再構成のうえ、「大学のテーマパーク化」の真意と、その問題点を浮き彫りにする。
「大学のテーマパーク化」の真意
「大学のテーマパーク化」には、「大学に遊びにきている」の他にもう1つの意味がある。そして、そっちの意味の方がよっぽど怖くて、かつ大学生のリアルを描いている。
テーマパークといえば、ディズニーランドやUSJが想起できる。それらのエンタメは、経営学の視点から見ても舌を巻くほど高度で優れている。学生たちもテーマパークの虜になっていて、1回行くだけで教科書が3、4冊買える価格のチケットでも、なけなしのお金を払ってテーマパークに向かう。なぜ若者たちはテーマパークに熱狂するのだろうか。
ビジネスの観点から見れば、テーマパークはかなりの設備投資を行う必要があり、要は装置にとことんお金がかかっている。その規模は鉄鋼メーカーや自動車メーカーに匹敵し、大学の比ではない。ありていに言えば、相当のカネをかけることで非日常は創造されている。
また、エンタメを徹底的に追求していて、とにかく楽しい。不快なものが極力排除され、楽しさだけで満たされた空間がそこにある。まさに夢の国だ(ただし、有料である)。能登路雅子著「ディズニーランドという聖地」にも、関連する指摘がある。意訳すれば「ネズミの手は汚いもので、だから手袋をするのだ」。
大学のテーマパーク化とはすなわち、「大学を、不快を消し去ったとにかく楽しい場所だと見なす」志向を指す。不快を消し去るというテーマパークの特徴を、大学にも求めるのだ。
「テーマパーク化」にはもう1つの含意がある。学生を「客」に見立てているところだ。そもそも学生は大学に学費を払っているわけであり、その意味で顧客である。しかし、元来、学生は大学にとって客のようで客でない。テーマパークの客が(テーマパークの外で)犯罪行為をしでかしても、テーマパークが責められることはない。でも、大学生が問題を起こしたら、大学も責められる。学生は大学の一員としての自覚と責任を求められる。お金を払っていながら組織の一員として振る舞う、不思議といえば不思議な関係である。
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