与野党ダメダメで韓国政治が混迷していく理由 尹錫悦大統領も最大野党も抱えるさまざまなリスク
東洋経済オンライン / 2024年5月1日 8時0分
投票日の数日前、ある与党の重鎮に話を聞くと、「負けは負け。接戦区でどこまで負けを減らせるかがカギだ」と漏らした。仮に負けるとすれば、その最大の原因は何かと尋ねると即答した。「大統領の自業自得。この一言に尽きる」。
与党の総選挙大負けは大統領が招いた
党の公認候補選びをめぐっては当初、むしろ「共に民主党」が混乱を極めた。李代表に近い人物だけが優遇され、距離を置く現職らがあからさまに除外されたためだ。
だが、この騒ぎが落ち着くと、流れは一転する。与党重鎮は野球のゲームにたとえ、「先制、中押し、だめ押しの典型的な負けパターンだな」と自嘲した。
まず先制を許したのは、医学部定員を拡大するとした医療改革が長期化し、政治志向にかかわらず社会全体に医療不安を招いたことだ。徹底抗戦を続ける医師団体側への反発は、次第に政府の無策ぶりに矛先を変えていった。
そのような中で起きた、李鐘燮・前国防相の出国騒ぎは中押しとなった。国防相時代の海兵隊員の殉職事件にからみ、出国禁止措置がとられていた李氏を強引に駐オーストラリア大使に任命。李・前国防相はいったん赴任したものの、スピード辞任に追い込まれた。
とどめを刺したのは「長ネギ」事件だった。超がつくほどの物価高に韓国社会が苦しむ中、スーパーを視察した尹大統領が、特価で売られていた長ネギの価格を「合理的な価格だ」と漏らした一言が「現状を何も知らないのか」と炎上。無党派層のみならず、保守の一部までも、与党離れを起こしたとされる。
総選挙で惜敗した与党候補の1人は「ただでさえ大統領夫人の疑惑や検察出身者の偏向人事という批判が渦巻いていたのに、さらに次から次へと(大統領室があるソウルの)龍山から逆風が吹きつけられた」と語った。そして「大統領への怒りや不満は、わりと早く顕在化していくのではないか」とも付け加えた。
憲法で大統領は再選できない韓国にあって、尹大統領に残された任期は約3年。解散がなく4年ごとにある総選挙は、次期大統領のもとで迎えることになる。与党内のみならず、各省庁の実務当局者への統制も、これまでのようにはいかなくなってくる。
過半数を大きく上回る175議席を得た「共に民主党」だが、こちらも今後の党内運営では不安がないとは言えない。圧勝の勢いを結束に変えられるかどうかが焦点となる。
巨大野党は早晩、尹大統領の最大の弱点である金建希夫人問題の追及を本格化させるだろう。
大統領夫人の疑惑も拡大か
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