「何の感情も抱かない」底辺校の生徒たちの異変 東海地方で30年働く先生が語ったこと(第1回)
東洋経済オンライン / 2024年5月2日 10時0分
一方で、今は、とてもおとなしいのです。それも悪い意味で。こちらの言うことに対して反応がなく、『このままでいい』と考えてしまっている生徒が多いのです。昔はみな、自分の人生に危機感を持っていました」
昔の生徒を「血気盛んだった」と語る先生は、さらに若き日々の出来事を思い出しながら、懐かしそうに語ってくれました。
昔は「ここに居続けたくない」意識があった
「わかりやすい例を言うと、かつて私が働く学校の生徒たちは、男子生徒も女子生徒もみんな『こんな底辺高校のバカとは付き合いたくない』と口をそろえて言っていました。それを聞いて私は『お前だってこの高校の生徒じゃないか、どの口が言ってるんだよ!』と笑ったものです。
それは裏を返せば、生徒がみんな『こんなところには、居続けてはいけない』と考えていたということですよね。
やっぱり、『このままじゃいけない』という感覚があって、どこかに飢餓感があった。
だから私自身も『じゃあ、そのためにもしっかり勉強しようぜ!』と声をかけることができていたんです。生徒の中には、頑張って勉強して、ちゃんとした大学に合格した子もいました。でも、今はそんなことはないですね」
過去と現在で生徒の質に劇的な変化がもたらされた背景や要因としては、何が考えられるのでしょうか。
「生徒というより親の問題でしょうね。私の学校は、以前よりも圧倒的に非課税世帯が増えました。生活保護で暮らしている世帯の生徒も多いです」と鈴木先生は語ります。
「私の学校は私立ですが、そういう世帯は学校に払うお金はほぼ0円で、国が支援しています。そうなるともう、私立とは言っても、税金で動いてる組織だから、公立高校に近くなってきてしまっているのが実情です」。親の苦しい状況を見て、頑張っても報われない、と感じる生徒も多いようです。
学校を辞めることに何の感情もない
「今は学校を辞めることになっても、何の感情も抱かない生徒が多いんです。昔は、どんなに成績が低い子でも、『次の試験が赤点だったら、ヤバいんですよ! 俺、ここでもダメだったら、もう行くとこ(学校)ないんですよ! どうすればいいですか先生!』と言ってきて、生徒なりに自分の人生を考えているんだと感じたものです。
危機感を持って火がついた生徒なら、いくらでも指導のやりようがあった。でも今は、こちらが『このままだとヤバいぞ!』と言っても、生徒からは『はあ、そうですか』という反応をされます。まるで他人事。自分の人生のことではないかのような反応なんです」
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