小林製薬「紅麹問題」結局、何がマズかったのか? "添加物のプロ"が解説「根本原因」はここにある
東洋経済オンライン / 2024年5月2日 13時1分
一歩間違えば、どんな雑菌が繁殖してしまうか、どんな変質が起こるかわかりません。「有用の微生物」と「病原性の微生物」は分類学上、近縁であることが多いからです。
「自然界においては1万分の1の確率で微生物の変異が起こる」という論文も出ています。
現に、今回の事故の原因として、青カビから発生することがある「プベルル酸」という物質が想定外に産生されたのではないかと疑われています。その他の未知成分も確認されているようです。
これが、どの段階で発生したのかなど詳しいことは、今はわかっていませんが、こういうことが「起こりうる」のが麹、発酵食品の世界なのです。
過去には、実際にこういうことが起こっています。
2003年、食品添加物として認められていた「コウジ酸」に「肝臓がんを発症させる疑いがある」と食品安全委員会が発表し、禁止されたのです(化粧品については再テストの結果、使用可能となっています)。覚えている方もいらっしゃるでしょう。
「コウジ酸」とは、麹を培養して作られる酸化防止(変色防止)の効果を持った物質です。
これも、最初は「麹菌が作り出すものだから安全」といわれていたものです。
「麹の品質管理」は命がけ
長年、発酵食品の開発に取り組んできた私には、「麹の管理」の難しさが嫌というほどわかっています。
食品加工において、味噌や醤油メーカーが麹を自社培養するところもありますが、一般的には麹菌(種麹)の供給会社、通称「麹屋」から買います。
私は麹屋さんとも交流があるのでよく知っているのですが、まあ「品質管理の厳しさ」といったら大変なものです。
まず、「種麹」を育てる部屋は限られた人物しか入れません。家族も入れない。品質管理のため、「異種のカビ」に汚染されないためです。また、どこも独自のノウハウがあるから、機密事項でもあるわけです。
この管理がちょっとでも甘いと、もうすぐに味が違ってしまいます。
「昨年と違う」といわれたら信用問題にかかわりますから、品質保全にはどの麹屋さんも必死です。
とくに日本酒の種麹は細心の神経を使って育てる必要があり、その大変さは味噌、醤油の比ではありません。
食品添加物の「ベニコウジ色素」を抽出する麹の管理については、安全審査を通さなければいけないから、なおのこと「徹底した厳しい管理」が必要となります。
翻って「紅麹コレステヘルプ」は、どのような管理がなされていたのでしょうか?
ここからは私の推測になってしまいますが、大量生産・効率化を優先するあまり、麹を育てる品質管理が不十分だったのではないかと思うのです。
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