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「おじさんドラマ」すっかり定着の底知れぬ魅力 ベテラン俳優が好演、世間の"おじさん観"も変化?

東洋経済オンライン / 2024年5月2日 13時20分

一種のバックステージものでスケジュールの変更などに振り回されるおじさん俳優たちの姿がなんとも愛おしい。そしてなによりも、脇役としては知られた俳優たちが一堂に会し主役を務めるという企画の大胆さが際立つ。2017年の第1シリーズが好評を博し、結局第3シリーズまで制作された。

この2作品に共通するのは、制作がテレビ東京という点。

テレビ東京と言えば、他の民放キー局ができないようなニッチな企画を番組にして成功させることで定評がある。その意味では、ドラマのなかのニッチな分野だった「おじさんドラマ」についても貢献度は高い。

「おじさんドラマ」を深夜だけにとどめておかなかったのも、テレビ東京らしい。

2014年に放送された『三匹のおっさん』。北大路欣也、泉谷しげる、志賀廣太郎が演じる幼なじみ3人が自警団を結成し、町内に起こる犯罪やトラブルを解決する。

3人が剣道など得意技を生かして大立ち回りを演じるアクション場面が見せ場。また特殊詐欺など現代人に身近な犯罪がストーリーに巧みに盛り込まれる一方、家族愛たっぷりのホームドラマでもあった。視聴率も好調で、こちらも第3シリーズまで制作された。

『孤独のグルメ』や『バイプレイヤーズ』は深夜ドラマだったが、こちらは金曜夜8時台の放送。まさにゴールデンタイム中のゴールデンタイムである。「おじさんドラマ」がメジャーになった瞬間だった。

これら一連のドラマが当たったことによって、「おじさんドラマ」は晴れてニッチなものではなくなった。『おっさんずラブ』が大ブームを巻き起こしたのは2018年のことだが、そうなる土壌はこうして少しずつ整えられていた。

スター主義からの転換、"おじさん観"の変化

ドラマづくりに関して言うと、こうした「おじさんドラマ」の台頭はスター主義から転換するひとつのきっかけになったとも言えそうだ。

ビッグスターありきのドラマづくりではなく、設定の面白さや企画のユニークさで勝負するドラマづくりを重視する流れを「おじさんドラマ」の成功は促したのではあるまいか。

またこうした「おじさんドラマ」からは、おじさんという存在に対する世間のイメージが変わってきている部分も垣間見える。

少し前までなら、おじさんはがさつで考えが古いといったような凝り固まったイメージが一般的だった。だからドラマでの扱いもそうだった。

だが最近の「おじさんドラマ」では、もっとおじさんは繊細だし、柔軟性がないわけではないものとして描かれるようになっている。野間口徹、吉田鋼太郎、阿部サダヲ、原田泰造らが演じるおじさんを見れば、それは明らかだ。

もちろん現実にはそうではないおじさんもまだまだ多いだろう。だがおじさんだって変わるべきところは変われるし、新しい価値観を認めていないわけではない。

「おじさんドラマ」に出てくるおじさんには、そんなささやかな希望が感じられる。時代も転換期にあるいま、だから「おじさんドラマ」はこれほどつくられ、支持されるのではないだろうか。

太田 省一:社会学者、文筆家

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