大手損保が断ち切れない代理店への過剰な忖度 いまだ横行する「社員代行」「テリトリー制」
東洋経済オンライン / 2024年5月3日 7時0分
社員代行をめぐっては、金融庁が3月に設置した損害保険の有識者会議で、取り締まり強化に向けた議論を始めている。今後、金融庁が詳しい実態を調べる中で、損保ジャパンのような事例がほかの損保でも露見する可能性がありそうだ。
自動車ディーラーにおもねる損保
金融庁の有識者会議では、自動車販売店などいわゆる兼業代理店への規制強化策についても議論が進んでいる。中でも耳目を集めているのが、代理店の保険募集における「比較推奨販売」のあり方だ。
比較推奨販売とは、代理店が複数の保険会社の商品を顧客に提示・推奨して販売する際のルールの一つだ。ポイントは大きく2つある。1つは、商品ごとの特性や保険料水準などの客観的な基準や理由について説明して顧客に比較検討させること。2つ目は、特定の商品だけを顧客に提示・推奨する場合は、代理店とその保険会社との資本関係や取引関係などの理由を顧客に説明しなければならない、という規制がある。2016年に施行された改正保険業法によって強化された募集規制の1つだ。
法改正以降、保険募集だけを生業とする専業の乗り合い代理店では、比較推奨販売の規制を満たすための体制整備が徐々に進んだ。その一方で、自動車販売店などの兼業代理店では、金融庁や財務局の監視の目が行き届かず、ほぼ野放しの状態だった。
その結果として起きたのが、ビッグモーター問題だった。
金融庁は有識者会議の中で、事故車をビッグモーターに斡旋する(入庫紹介)件数に応じて、「保険会社の商品を顧客に推奨していたにもかかわらず、(事務に精通しているといった)別の理由を装っていた」と指摘。そのため「保険業法が求める比較推奨が適切に実施されておらず、顧客の適切な商品選択が歪められていたおそれがある」と総括している。
今後は適切な比較推奨販売を、自動車販売店などの兼業代理店にも徹底させる考えだ。
あいおいへのテリトリー変更
ただ足元では、西日本地域のある「トヨタ自動車系ディーラー」と損保大手の間で、比較推奨販売を歪めかねない事態が起きている。
そのディーラーは複数の販売店を展開しており、損保大手各社の首脳が定期的に挨拶にうかがうほどの有力企業だ。損保との取引は、トヨタとの関係が深いあいおいを中心に、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社で9割超を占めていた。
しかし今年初めに突如、同ディーラーは約3割の契約シェアを持っていた三井住友海上に対して、事実上の取引打ち切りを宣告した。さらに同ディーラーの代表者は、三井住友海上の自動車保険を優先的に販売する「テリトリー店舗」を、すべてあいおいに変更すると明言したという。
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