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いなば食品、大炎上も「ほぼ沈黙」の戦略的な是非 「沈黙は金」黙って耐える…のはもう通用しない

東洋経済オンライン / 2024年5月3日 20時30分

しかし、週を追うごとに、告発の内容が過激さを増していく一方、公式サイトに動きは見られない。

その真意は同社従業員、いや上層部のみが知るものだろうが、どのような理由のもとで、発言を行っていないのだろうか。

「雄弁は銀、沈黙は金」という慣用句がある。ベラベラと話すことも大事ではあるが、それよりも黙っていることに価値がある。ネットメディア編集者として、これまであらゆる「炎上」を見てきた筆者からしても、確かにこれが当てはまるケースをいくつも見てきた。企業イメージを守るための戦略としてはアリと言える。

ただ、この手法がうまくいくのは、あくまで火種となる要因が、ひとつないしは少数の場合だ。今回の疑惑でも、「ボロ家」や「食品衛生法」の1点のみが追及されていたのなら、この対応でも理解できる。

「寮のボロさ」ではなく「経営体質」が論点だ

しかし、一連の報道は、そんな簡単な話ではない。

筆者は、最初のプレスリリースが出た直後から、「いなば食品は、問題とされている論点を見誤っている」と考えている。これまで同社が説明してきた「ボロ家」などの個別事案は、あくまで氷山の一角に過ぎず、文春などは「女帝」を筆頭とした経営体質の問題点を指摘してきたのだ。

例えば当初のリリースでは、シェアハウスの改修工事をめぐる経緯がつらつらと書かれていたが、どれだけ改修しても、企業統治の意味では小手先の対応にしかならない。そこに加えて、読みにくいと話題になった謝罪文言も含めて、「なぜこれでOKと感じたのか」という、企業倫理的なところが問われているのだ。

その視点から言えば、現状公表されている3本のリリースでは、まだこの論点に向き合えているとは言えない。しかしその間にも、文春は二の矢、三の矢と、詳報を出し続けている。そこへ来ての「猫ネグレクト」疑惑は、かなり痛いものになるだろう。

これまでの報道は「いなば食品」が主語で、風評の意味では、子会社・いなばペットフードの防波堤になっていたため、人気商品「CIAOちゅ〜る」のブランドイメージは、それなりに守られてきたように思える。

しかし、「猫ネグレクト」が報じられてもなお、沈黙を貫くようでは、缶詰に続く、同グループの基幹商品にも、多大な影響が出てしまいかねない。

ここ数年の企業スキャンダルを見ると、少しずつ傾向が変わりつつあるように感じられる。とくに中小企業では「社員が上層部に言いづらい空気」、つまり風通しの悪さが、現場の士気を下げ、経営層の権力を増し、コンプライアンス意識が低下する温床となった……そんな事案が、今まで以上に報じられている。

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