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NHK大河と朝ドラで「知性派ヒロイン」描く"思惑" 「虎に翼」「光る君へ」の主人公には共通点がある

東洋経済オンライン / 2024年5月5日 19時0分

彼女の文才が精神を癒やすのみならず、夫の愛をつなぎとめることにもなるのだ。

男性による日記以外に、女性の観点で描いた記録があることが、1000年のちの現代にも役に立っているとは、道綱母や紫式部や清少納言は想像しただろうか。

ロバート秋山が演じて視聴者に人気の藤原実資も日記を書くキャラで、歴代妻から、政治に対する小言を日記に書くように助言されている。

日常を観察し書き残す偉大なる記録文学を残した藤原道綱母も実資も紫式部も、悩みを文学にぶつけることで救われているというエピソードは、画的に派手な戦エピソードと比べたら地味ではある。が、いま人間の知性の可能性に目を向けることこそ、終わらない戦争や不安のつきない自然災害やちっとも豊かにならない生活のなか、必要なのではないだろうか。

「婚姻状態にある女性は無能力者」だった時代

朝ドラ『虎に翼』でも、日記が重要な役割を果たしている。ヒロイン寅子(伊藤沙莉)の母・はる(石田ゆり子)の日記が、家長・直言(岡部たかし)の無実の罪を晴らす助けになった。

「婚姻状態にある女性は無能力者」などという法律もあった時代に嫁ぎ(のちにその法律は改正された)、人前では夫を立てて目立たぬようにしてきた妻の記した日々の暮らしの記録が、日本を揺るがす大事件(株式売買をめぐる疑獄事件で、官僚、政治家が逮捕され、内閣が総辞職することになった帝人事件がモデル)の真相を暴く役割を担うのだ。

母の日記から、父の自白との矛盾を発見した寅子は、大学で法を学んでいる。『光る君へ』のまひろと並ぶ知性派ヒロインだ。彼女のモデルは、日本ではじめて女性の弁護士になり、のちに裁判官になった三淵嘉子。

明治大学法学部出身で、ドラマでは明律大学と名を変えている。戦前、原則として、大学で学ぶことができる者は男子に限られていた時代、明律大学には女子部があった。そこに入学した寅子たちは努力のすえ大学に進学する。

途中、法改正によって女性も弁護士になれるようになるが、それまでは法で定められていないため、法律を学ぶ女性は応援されなかった。女性をはなから馬鹿にしたり、勉強を続けることを問題視して婚約破棄したりする男性もいるなか、寅子と何人かの志ある女性たちは、無理解や偏見を打破しようとする。

ドラマジャンルで人気の「リーガルエンタメ」と謳ってもいて、男女平等でなかった時代に、平等を勝ち取るべく奮闘する社会派の物語が、堅苦しくなりすぎないようにいろいろ工夫されている。

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