「先生が壊れる」若手教員に病休者が多い深刻事情 失われる意欲、なぜ教員は追いつめられるのか
東洋経済オンライン / 2024年5月5日 14時0分
たびたび話題になっている学校教員の「働きすぎ」問題。朝日新聞の連載をもとにした書籍『何が教師を壊すのか 追いつめられる先生たちのリアル』から一部を抜粋、再編集し、今、学校で何が起きているのかを見つめます。
3回にわたってお届けします。
2回目:「これって教員の仕事?」疲弊する先生のリアル
3回目:「何十年前?」職員室のDX化が進まない「なぜ」
増加する「心の病」による休職
若手の教員が追い詰められている。
【画像で見る】若い先生が追いつめられていることを示すグラフはこちら
関東地方の公立小学校に勤める30代前半の女性教諭は2022年度、ある学年でクラス担任を務めてほしいと管理職から頼まれた。
この学年は以前から、暴力をふるう子や授業中に座っていられない子が少なくない。このため担当する教員が対応に苦慮してきた。体調を崩して休む教員もいた。
不安を感じたが、管理職から頭を下げられ、引き受けた。まずは子どもとの信頼関係を築く。新年度が始まる際、そんな目標を立てた。プレッシャーを感じていた。
担任としての日々が始まった。子どもたちから目を離せばすぐ、けんかやトラブルが起きた。自分がいない間に何かあったら、と思うと、休み時間も教室を離れられなかった。
昼休みも校庭などで見守った。子どもがいる間はトイレに行くことや水分補給も我慢した。
子どもたちが下校すると、行事の準備や事務作業に追われた。長い会議もよくあった。
午後7時ごろになってようやく、提出物のチェックや授業準備といった「自分の仕事」に取りかかれる。退勤は毎日、午後10時ごろになった。
連日、在校時間は15時間ほどに上った。注意して見守っていたからか、幸い大きなトラブルは起こらなかった。次は子ども同士の関係を深めてもらおうと考え始めた矢先、体に異変が起こり始めた。
胸が痛み、息が苦しい。帰宅途中、しゃがんで動けなくなることもあった。クラスをよくしたい、子どもを導きたい。そんな意欲も失われていた。
ある朝、いつものように支度を終え、出勤しようとしたが、体がまったく動かなかった。涙がとまらず、学校には行けなかった。病院で精神疾患との診断を受け、当面、休職することになった。
休み始めると、罪悪感に苦しんだ。子どもに申し訳ない。クラス担任の自分が不在になったことで、同僚にも負担がかかっているだろう……。保護者からの信頼がどうなるかも心配だった。
教員として、忙しいながらも成長する子どもの姿にやりがいを感じてきたし、仕事は楽しい面もあった。休まざるを得ないのは不本意で、つらかった。
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