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ハウス、500万個突破「クロスブレンド」の大勝負 定番バーモントカレーとの密接な関係とは?

東洋経済オンライン / 2024年5月5日 7時0分

スパイスの香りがしっかりと立つようにカレーのベースも刷新し、調味料や油脂、小麦粉のバランスなども調整。その結果、3000回以上も試作を繰り返した。新機軸の商品は、ひたすら地道な調整の繰り返しだった。

バーモント値上げ後の客離れを防ぐ役目も

商品を担当した食品事業本部の山本篤志氏は「ごはんの甘みに負けない味付けで、香りも味もスパイスで表現したのがクロスブレンドカレーの特徴。ベースはシンプルにしながら、技術でスパイスの味を引き立てている」と解説する。

風味に加えて、クロスブレンドカレーにはもう一つ、重要な使命もあった。主力のバーモントカレーが値上げを実施する中で客離れを防ぎ、値頃感のある価格帯で勝負することだ。

クロスブレンドカレーは8皿分・140グラムの参考小売価格が258円(税別)、バーモントカレーは6皿分・115グラムが希望小売価格241円(税別)だ。単純比較で、1皿当たりの価格はクロスブレンドカレーが2割ほど安い。

ハウスは独自の加熱・焙煎技術でスパイスの香りと旨みを引き出し、多くの種類のスパイスを用いても価格を抑えられたと説明する。ただ、この点にはもう一段の企業秘密と努力がある。カレーベースの開発やマーケティングなどでも、多方面でコストを抑える工夫を凝らしているようだ。

2023年8月の発売時には、営業努力のかいあって数多くのスーパーの店頭に並び、販促の企画なども頻繁に実施された。

全国でテレビCMを放映し、1400万人超と食品メーカー屈指の「友だち数」を誇るLINEでの情報発信も進めた。新規軸の風味、手に取りやすい価格、売り場の企画。さまざまな戦略が絡み、ヒットへとつながっていった。

過去のルウ商品と比べても好発進となったクロスブレンドカレー。今後はブランド確立に向けた段階に入る。

山本氏は「2月に辛口がそろったので、今後が勝負になる。新しいフレーバーを出すよりも、まずはこの3品(甘口・中辛・辛口)を根付かせたい。そこに資源を投入していく」と意気込む。

値上げを巡るメーカー各社の葛藤

近年、値上げラッシュの様相となった食品業界。コスト増への対応として値上げは欠かせないが、どれだけロングセラーの商品であっても、値上げ後も消費者の支持を集め続けることは難しい。

安さを求め、他社製品や量販店のPB(独自企画)商品に流れてしまう消費者は非常に多いのが現実だ。特に嗜好品は売上数量が一時的に2割減などと大きく落ち込むこともある。

そんなシビアな消費環境で、どうすれば自社商品のファンをつなぎとめられるのか。新機軸を打ち出し、価格面も抑えたクロスブレンドカレーのヒットは、現在の業界の勝ち筋を示す重要事例といえそうだ。

田邉 佳介:東洋経済 記者

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