1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

ビッグモーター再建のカギは伊藤忠エネの現場力 第一陣として「精鋭部隊」の約40人を送り込む

東洋経済オンライン / 2024年5月6日 8時0分

伊藤忠エネクスの関係者は、「新会社の中古車仕入れ、販売網がわれわれの事業と親和性が高いのはもちろん、一等地にある店舗を物流拠点として活用することもできる。当社にとっても事業の可能性が広がっていく」と話す。

伊藤忠エネクスとしても精鋭部隊を送り込み、早期に黒字化を実現して取り込み利益を得たい考えだ。

ビッグモーター創業家とは決別

一方、ウィーカーズの問題は、自動車保険の水増し請求をはじめ、街路樹の無断伐採など度重なる不祥事でビッグモーター時代に失墜した企業イメージをどう払拭するかだ。社名や看板を変えるだけで信頼が回復するわけもない。

ウィーカーズは会社発足とともに「改革貫徹本部」を立ち上げた。コンプライアンスについては、弁護士事務所のもとで内部通報制度を導入し、不法行為の洗い出しや予防に努める。不正行為の背景となった利益至上主義の人事評価も改め、顧客満足度を可視化したうえで従業員の評価に反映させる。

「組織風土の改革は一丁目一番地としてやっていきたい」と田中社長は意気込む。改革の詳細は、進捗を含め秋口に改めて開示することになるという。

新会社はビッグモーター元社長の兼重宏行氏ら創業家とは決別する。伊藤忠側は2月下旬頃に創業家側と交渉し、一定の譲歩を引き出したとみられる。

「出資金の一部は債務の返済原資として旧会社に渡るが、創業家にはお金が渡るどころか、むしろそれなりの責任を取ってもらう」。ウィーカーズの合六(ごうろく)渉経営企画部長は会見でそう強調した。

実質的に創業家が持つ旧ビッグモーター株はJWPファンド傘下の特別目的会社に譲渡され、債務返済や訴訟対応には存続会社(BALM)があたる。存続会社にはビッグモーターの和泉伸二社長がそのまま残る。

末端にまで意識改革を浸透できるか

中古車販売業界ではビッグモーターに限らず、不祥事が相次いだ。2023年8月にはグッドスピードで保険金の過大請求が発覚。業界2位のネクステージでも保険契約の捏造などが明るみに出た。

強引な営業、パワハラの横行――。全国消費生活情報ネットワークシステムでは「中古自動車」に関する消費者からの相談が2021年度は7237件、2022年度は7137件と、毎年7000件を超える数となっている。

同業者からは「業界が受けたネガティブな影響が、伊藤忠によってプラスに転じる可能性が高い」との声があがる。こうした声を意識してか、ウィーカーズの田中社長は「中古車業界が信頼を取り戻すため、われわれが率先して(顧客に)徹底的に誠実になり、事業の透明性を追求する」と会見で語った。

しかし、別の業界関係者は「ビッグモーターでは兼重氏から和泉氏へと社長が代わっても不祥事は起きている。経営体制が変わったからと言って、すぐに従業員の意識は変わらない。伊藤忠がどこまで末端にまで意識改革を浸透させることができるのか。一朝一夕にはいかないだろう」と話す。

「家族や友達に自分の仕事について胸を張って語れるようになろう」と社員に呼び掛けたという田中社長。売上シェアで業界ナンバー1を誇ったビッグモーターは、新会社となってその輝きを取り戻すことができるのか。再建までの道のりは、長く険しい。

森 創一郎:東洋経済 記者

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください