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モノ言う株主・丸木氏が語る「日本企業の経営問題」 見過ごされる「ガバナンスウォッシュ」とは

東洋経済オンライン / 2024年5月7日 20時0分

あるいは、「取引先持株会」というものも現存しています。文字どおり、ある会社の複数の取引先が同社の株を毎月少しずつ無条件に買い増していく会です。

まったく時代に逆行しているようですが、取引関係がある以上、なかなか「抜ける」とは言い出しにくいのでしょう。いかにも日本的な組織だと思います。

たしかに株を持ち合っていれば、お互いに安定株主になり、株主総会で会社提案の議案には必ず賛成するし、有事には買収者から経営者を守る方向で議決権を行使してもらえるでしょう。

買収を恐れる経営者は防衛策を講ずるだけではなく、政策保有株主を増やそうとし、その見返りに自社でも取引先の株を持ち合うわけです。

しかし、そもそも株主から預かった資産を使って取引先の株を買い、取引先の取締役の地位の保全に協力していいのかという問題があります。

それに、経営者の味方として議決権を行使することに明示的または黙示的に合意している複数の政策保有株主は、その持ち株数の合計が発行済み株式数の5%以上になれば、本来なら金融商品取引法に則って「大量保有報告書」を「共同保有者」として提出しなければならないはずです。

ところが今のところ、そのような事例はありません。これは同法違反の疑いがあるのではないかというのが、私の持論です。

いわゆるウルフパック(複数の株主が協調関係にあることを隠し、一気に対象会社に攻勢をかけ、株価向上策や株主還元といった要求を実現させようとする投資戦術)が話題になるのですから、こちらの政策保有株主パックも問題にすべきでしょう。

取引先から「株式保有を強制」の問題

取引先から、株式保有を事実上強制される場合もあるようです。これなどは、独占禁止法上の不公正な取引方法である、「優越的地位の濫用」に似た行為の被害者であるともいえます。

また通常業務にも影響を及ぼしかねません。例えば、取引関係の維持を株式の持ち合いに頼るようになると、製品やサービスの質を向上させようというインセンティブが働きにくくなります。

逆に株を持ち合っていないことを理由に取引を断られたり、株を保有していることで取引という利益が得られたりすることがあるとすれば、これは株主への利益供与を禁じた会社法に抵触する可能性すらあります。

私はずっと問い続けているのですが、株式保有と取引との因果関係、つまり「株を保有していると、なぜ取引が維持でき、円滑になるのか」について合理的な説明を聞いたことがありません。

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