アマゾン参入で「ふるさと納税」に起こる大変化 税金を喰い荒らすふるさと納税ビジネス「前編」
東洋経済オンライン / 2024年5月7日 7時0分
「マクロ視点では、日本の税金が外資系企業に流れることに反対だが、ミクロ視点でわが町のことを考えると、アマゾンを利用しないことは考えにくい」。その担当者は悩ましい選択を迫られている。
仲介サイトの競争環境はどう変わるのか。現状、大手4社の手数料率は10%前後でほぼ横並びとなっている。そこへ「初期手数料250万円+3.8%」と異質な形態が登場するが、手数料率自体がシェアに大きな影響を直接及ぼすことは考えにくい。手数料を負担するのは自治体側だが、仲介サイトのシェアを決めるのは寄付者だ。寄付者が手数料率を意識することはほぼなく、ポイント還元、CMなどによる認知度、各社の他サービスとの連携などが、シェアを左右する傾向がある。
2点に集約される「アマゾンの脅威」
仲介サイトや自治体関係者への取材によると、アマゾンの脅威は次の2点に集約される。1つが、物流を握っていることだ。巨大EC事業者であるアマゾンは倉庫や配送網を独自に抱えている。通常の商品の物流に、ふるさと納税の返礼品を追加することができ、既存の仲介サイトと比べてスピーディーな配送や、費用負担の軽減につながる可能性が高い。
もう1つが、手数料や物流の費用負担が減ることで、同じ返礼品を得るのに必要な寄付金額が下がる可能性だ。「総経費は寄付金額の5割まで」の上限がある中で、返礼品以外の手数料や物流費を下げられれば、返礼品の調達費に上限の3割まで使いやすくなる。
過去に「ふるさとチョイス」が競合より低い手数料率5%で運営していた際に、同じ自治体の同じ返礼品であっても、他社サイトより低い寄付金額で済むケースがあった。アマゾンがこうした「価格優位性」を持つことになれば、利用者獲得の原動力になりうる。
拍車をかけるのが広告だ。「250万円+3.8%」の手数料では、寄付金額が大きくなるほど経費率が下がっていき、自治体が広告を増やせる。一般の寄付者から見れば、すでに多額の寄付を集める上位の自治体ほど「お得」に映り、目に留まる機会も増えるだろう。
佐々木 亮祐:東洋経済 記者
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