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社会保障は金持ちから貧困層への再分配にあらず 主目的は「消費の平準化」と「保険的再分配」

東洋経済オンライン / 2024年5月10日 8時0分

ただしこのシステムは、給付が若いときになされるために、私保険のアナロジーで例えることは難しいのは事実だ。この点、奨学金を先に受けて、卒業後に賃金比例で返済する所得連動返済型ローンを、時間的に逆向きの社会保険と呼ぶこともある。

支援金は、それに類似した制度であるとも言えるが、社会保険という言葉にこだわる必要もないだろう。支援金も、医療、介護、年金も、賃金システムの欠陥を補う賃金のサブシステムであって、企業を含めこれらの制度への参加者全員が分かち合い、支え合う連帯の仕組みである。今回の支援金の成立でこの国でもようやく、若年期、勤労期、高齢期のための賃金のサブシステムとしての再分配制度がそろうことになる。

もっとも、子ども・子育て支援策は、社会・経済の参加者全員に、特に社会保障全般の持続可能性に関して直接・間接のメリットがあるのは事実であり、それゆえにそのメリットを明示的に意識してもらえるように、支援金に保険料という言葉が使われているのであろう。

閣議決定「こども未来戦略」には、「企業、地域社会、高齢者や独身者も含め、社会全体でこども・子育て世帯を応援するという気運を高めていく国民運動が必要であり、こうした社会の意識改革を車の両輪として進めていく」とある。

以前から繰り返し言い、書いてきたことであるが、今回の仕組みだと「連帯を通じて個人、地域、社会につながりがあり、子育て費用を社会全体で負担していくという意識を涵養できる」。なかなかよい所得の再分配制度の誕生である。

権丈 善一:慶應義塾大学商学部教授

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