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財界総理輩出の名門・住友化学が陥った"2重苦" 医薬品と石油化学の苦境で過去最悪の赤字転落

東洋経済オンライン / 2024年5月10日 7時10分

産油地に立地し、原油よりも安価なエタンガスを主原料とするラービグは、「極めて競争力のあるプロジェクトのはずだった」(岩田社長)。そのコスト競争力への自信もあってか汎用品が主力。しかし、前述のとおり、汎用品市況の悪化で利益が出ない。

加えて、ラービグは石化の前工程である石油精製も行う一貫プロジェクトで、精製プラントの競争力にも難がある。低付加価値の重油を多く産出し、ガソリンやジェット燃料など高付加価値品の割合が低いのだ。

住化はアラムコと「共同タスクフォースチーム」を結成し、短期集中で事業の位置づけの見直しを始めてはいる。しかし、短期にできることは限られている。ラービグを抜本的に改善するには精製プラントの高度化や石化の高付加価値品シフトが必要で、費用も時間もかかるからだ。

一方、住化は追加資金は出さない方針を明確にしている。ラービグとしての資金調達のやり方次第で住化の持ち分比率が低下して影響が緩和される可能性はあるものの、石化市況の回復頼みというのが現実だ。

石化事業に関しては、シンガポールでも一部で生産撤退など事業再構築を推進。国内でもエチレンプラントの合理化を打ち出している。

国内のエチレンの生産能力過剰と低稼働は業界全体で長年の課題となってきた。だが、上工程、下工程の企業群がパイプラインなどでつながれたコンビナート特有の事情があるため、再編はなかなか進んでいない。

険しい復活への道のり

さらにカーボンニュートラル対応や環境負荷低減も迫られる。これらも業界共通の問題で、ビジネスチャンスでもあるが、投資負担が重いことに変わりはない。

住化は24年度にコア営業利益1000億円・純利益200億円、30年度にはコア営業利益で3000億円近い目標を掲げる。

24年度については減損一巡やリストラ効果で手が届かない数字ではない反面、農業やICT、再生医療を成長ドライバーとする30年度の実現性は薄い。名門復活への道のりは険しそうだ。

山田 雄大:東洋経済 コラムニスト

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