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「~してあげる」4歳娘の言葉で感じた日本の大問題 日本の福祉にも刻まれた「上下関係」への違和感

東洋経済オンライン / 2024年5月12日 10時40分

その日常は意外に身近なところにある。それは<福祉>の世界だ。

生活保護、介護、看護、養護、援助、介助、支援……誰もが知っている、当たり前のように使われている用語だが、じつは、すべてに「まもる(=護)」「たすける(=助・援・支)」という語が含まれている。

そもそも「福祉」とは「福」も「祉」も「しあわせ」を意味する。日本の福祉には、「私があなたを護り、助けて、幸せにしてあげる」という上下関係が刻み込まれているのだ。

上下関係の「下」に組み込まれることへの不安

人間は歳をとると、何らかの障がいを持ち、多くの人が福祉サービスを利用することになる。そんな未来に不安を感じるのは、きっと、私だけではないはずだ。

なぜか。それは、自分が朝から晩まで誰かに守り・助けられる存在になる、人様のご厄介にならないと生きていけなくなる、助けてくれる人たちに不平不満も言えなくなる、要するに、上下関係の「下」に組み込まれることが不安だからなのではないか。

みなさんはどうだろう。「してもらうこと」を「情けないこと」だと感じないだろうか。

アジア通貨危機が起きた1997年から1998年にかけて、失業者はいきなり50万人ほど増え、40~60代の男性を中心に自らの命を断つ人が続出した。たった1年で自殺者数は8000人以上増え、14年にわたって3万人を超えた。

私たちにとって「死」よりつらいことはない。でも、住宅ローンを組み、家族を養わなければならないと考えていた少なからぬ男性労働者は、生活保護や失業保険に頼る、つまり、人に助けてもらうくらいなら死んだほうがマシだ、と考えたのだった。

日本は不思議な国だ。母子家庭の母親が働きに出ると貧困率があがってしまう。なぜなら、パート労働をはしごして稼ぐお金より、生活保護で受け取るお金のほうが多いからだ。

働くと貧しくなる。なのに、母子家庭の母親の就労率は先進国トップクラスだ。フランスやスウェーデンでは、生活保護の対象者の8~9割は制度を利用する。でも日本の利用者は2割にも満たない。救済されることは、権利ではなく、失格の烙印のようにうつる。

「してもらうこと」は「情けないこと」。だから、私たちは誰かに頼ることを恐れる。お金を必死に貯めて、サービスを「買おう」とする。「してもらう」ではなく「させる」ために。金で片づける能力を持つ人たちを私たちは「自立した人間」と呼ぶ。

「生活保護=public assistance」に込められた意思

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