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財政検証で判明、年金「100年安心」ではなかった 公約を実現するには今後も調整が必要だ

東洋経済オンライン / 2024年5月12日 10時0分

「100年安心年金」が導入されて20年経つが、公約は実現されているのか(写真:Luce/PIXTA)

2004年に「100年安心年金」が導入されて、20年が経った。100年間にわたって安泰な年金制度が実現されたはずなのだが、本当にそうなっているだろうか? マクロスライドをほとんど実行できず、また保険料収入見通しが楽観的すぎたので、「100年安心年金」は、実現できなかった。

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財政検証の最重要課題は公約が実現できたか

今年は、公的年金財政検証の年だ。今回の財政検証で最も大きな重要な課題は、「100年安心年金」の公約が実現したかどうかをチェックすることだ。

政府は2004年に、「100年安心年金」に向けて公的年金の改革に着手し、約20年間にわたって給付を減額し、保険料率を引き上げることとした。これは2022年頃には完了するはずであった。したがって、今後は何もしなくても「100年安心」年金を享受できるはずなのである。

以下では、現時点の公的年金が、2004年に想定された姿になっているかどうかを検証することとしよう。

まず給付について見ると、2004年の年金改革で、給付を徐々に切り下げるための手段として「マクロ経済スライド」を導入した。これは、既裁定年金を、毎年0.9%程度ずつ減額する措置だ。

しかし、実際には、毎年行うこととされていたマクロスライドは、2023年を入れて、わずか4回しか実行できなかった。スライド実行のためには、物価上昇率が0.9%を超える必要があるが、それが例外的にしか実現しなかったからだ。

仮に当初計画通りに実行されていたなら、2004年から2020年の16年間では、年金額は約14.4%削減されていたはずだ。ところが、実際には3回しか行われていないので、約2.7%しか削減されていない。したがって、不足を取り戻すには、現時点で、年金を少なくとも約11.7%減額する必要がある。

これが困難であれば、今後もマクロスライドを継続する必要がある。しかも、従来より強化して、物価上昇率いかんにかかわらず、毎年0.9%程度の減額を実行しなければならない。

上で「少なくとも」と書いたのは、スライドを適用される世代が後にずれれば、受給者総数が増えるからだ。したがって、受給者一人あたりの所要削減率は、0.9%より高くなる(あるいは、実施年数が多くなる)。

保険料収入は不足 

次に、保険料について見てみよう。ここでは、2005年と2020年の比較を、厚生年金の厚生年金勘定について行うことにする(厚生年金の厚生年金勘定とは、厚生年金のうち、共済組合などを除く部分。なお、旧厚生年金と共済年金は、2015年に統合された)。

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