営業利益5兆円超えトヨタ、減益予想で示す覚悟 EV・AI・ソフトウェアに1.7兆円投じ変革を加速
東洋経済オンライン / 2024年5月13日 9時0分
電池やモーター、インバーターといったコストがかさむHVの採算性は、通常のエンジン車よりも劣った時期が長かった。が、近年のトヨタではHVとエンジン車の台当たり利益は同等、車種によってはHVが上回るという。
2022年に営業利益率16.8%を叩き出したテスラ。だが、EV販売が伸び悩むうえにBYDなど中国勢との競争で値下げを強いられたことなどから、直近の2024年1~3月には5.5%まで低下した。気がつけば、営業利益率でトヨタはテスラを上回り、時価総額の差も縮まっている。
盤石に見えるトヨタだが、2025年3月期の業績予想を見ると危機感がうかがえる。
2割減益の予想を出した意図
この日、トヨタが示した2025年3月期の営業利益予想は4兆3000億円と19.7%減益を見込んでいる。これは成長領域の研究開発などにかかる費用を3200億円、仕入れ先や販売店への還元を3800億円積み増すことによる影響が大きい。
「大きな事業構造改革が必要になる」「従来の大量生産、大量消費のビジネスモデルは持続的ではない」。佐藤社長が繰り返したのは、従来のビジネスモデルからの脱却だ。
自動車業界ではEVシフトや自動運転技術の開発に加えて、ソフトウェアサービスによる新たな価値が新車の商品性を左右する「SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)」と呼ばれる考え方が広がりつつある。さらに、希少資源を多く使う電池の生産コストが重いEVは、現状のエンジン車に比べて価格上昇が避けられない。今までより新車が売りにくくなることが予想される。
このため、新車の購入後もソフトウェアを通じた性能・機能向上によって対価を得たり、EVを通じた充電サービスや蓄電池を使ったエネルギーサービスなど新たな収益の種を育てる必要がある。EVをより廉価に造るための、生産技術改革も欠かせない。ビジネスモデルや生産手法といった事業そのものの転換に迫られており、部品メーカーや販売店を含むバリューチェーンの構造変化も同時に促さなければならない。
電池事業を祖業とするBYDは、電池に加えて半導体も内製化するなどコアコスト競争力を磨くビジネスモデルを構築。テスラは自動運転・ソフトウェアサービスに加えてEVに特化した効率的な生産体制を追求する。中国のスマホメーカー小米(シャオミ)など異業種参入も相次ぐ。こうした新たなライバルたちとトヨタは戦っていかなければならない。
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