日立、グループの再編に成功した「ただ1つの理由」 「必要な会社は残し不要な会社は売る」ではダメ
東洋経済オンライン / 2024年5月15日 7時40分
さらに、2020年には日立化成、2021年には画像診断関連事業、2022年から2023年にかけては日立建機と日立金属を売却しました。かつて「日立御三家」と呼ばれ、日立グループの成長と発展を支えてきた日立化成や日立金属も含まれています。各社の売却には身を切るような痛みを伴いましたが、それぞれの事業の未来の成長のために決断しました。
上場会社の経営は、いかに当期利益を増やすか、EPS(1株当たり当期利益)を上げるかです。優良なグループ会社をたくさん連結してすばらしい営業利益を上げています、しかし実際には少数株主に利益がどんどん流れて、当期利益は大したことがない……そんな経営がよいとは思えません。
言うまでもありませんが、経済のグローバル化の急速な進展により、ビジネスの世界はどの分野であれグローバルな競争力を持たなければ淘汰される時代となっています。日立もその中で戦っています。
CEO就任以来、私は中西さんの方針を継承し、ルマーダが象徴するデジタル技術を活用した社会イノベーション事業を中心とした、課題解決・サービス提供型ビジネスに重心を移す方針で諸改革に着手しました。
別の言い方をすると、ライトアセットへの転換です。ライトにはRightとLightがありますが、その両方です。つまり、適切かつ軽い保有資産への転換です。
資産の回転率を上げ、資本効率を高めることが企業経営においては重要ですが、100%子会社でなくとも、連結子会社はすべての資産が日立グループ連結のバランスシートに計上されてしまいます。また、日立の成長をわかりやすく示すには、EPSを大きくすることに尽きますが、非支配持分(日立以外の株主)の利益は日立グループの当期利益には残りません。そのため、大きな資産を保有する“重たい事業”は整理し、保有資産の少ないサービス中心の事業への転換をめざしたのです。
残るか出るか、残すか出すか
親会社は子会社に対して絶対的な力を持っています。過半数の株式を保有していますから、日立にとって必要な会社は残し、不要な会社は売却するという方法もありました。欧米のCEOなら躊躇せずにそうすると思います。
私は少し違うアプローチの仕方をしました。「この会社とこの会社を一緒にすればシナジーがある」という理論だけではグループ会社の中で反発が起こり、合理的な判断が難しくなるケースを見てきたからです。感情的な反発が起きると、うまく行くはずのことですらうまくいかなくなってしまいます。社員が「望んで一緒になる」と思えるかどうか。「一緒になったら、もっと大きいことができるな」という自覚を持ってもらえるかです。
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