新NISAで「貯蓄から投資へ」に「消費から投資」も? 投資熱の背景に「将来不安」、消費に回る日は遠い
東洋経済オンライン / 2024年5月15日 8時0分
日本証券業協会によると、1月に始まった新たな少額投資非課税制度である新NISAをきっかけに投資の裾野が広がっており、証券会社10社で1〜3月の新規口座開設数は170万件と前年同期比3.2倍に膨らんだという。
【グラフ】何が目的で投資しているのか?積極派と消極派の見取り図
新NISAをきっかけに投資を始めたという人も少なくないとみられるが、筆者らの研究(*注1)によると、少なくとも2023年10月にWeb調査を行った時点では旧NISAを利用していなかった個人の新NISAに対する積極度はそれほど高くないという結果だった。
むろん、年初から日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新するなど、「投資熱」を高める動きがあったことが、今年に入ってから新NISAへの積極度を引き上げた可能性はある。
「やらないと心配」という力学
しかし、筆者は最近の「投資熱」は、将来不安の延長(あと少しはインフレ対策)といった危機感による消極的なものであるかもしれないと危惧している。すなわち、「積極的に投資をやりたいわけではないが、やらないと心配だ」という力学が働いている可能性がある。
日本の家計のポートフォリオは現預金に集中しており、リスク分散の観点などから消極的だろうが何だろうが、投資が拡大する(「貯蓄から投資へ」が進む)こと自体は日本経済にとってポジティブだろうと、筆者も考えている。
しかし、仮に「貯蓄から投資へ」の背景が消極的なものだとすれば、実体経済に与えるプラス影響は限定的かもしれない。将来不安によって投資されたお金による利益は、ほとんど消費に回らず再投資されてしまう可能性が高いからである。
行動経済学には「あぶく銭効果」(ハウスマネー効果)という言葉がある。「悪銭身に付かず」と言われるように、思いがけずに得た「あぶく銭」は貯蓄されずに消費されやすい。
「あぶく銭効果」は無駄遣いをしてしまうという意味で良くない例として扱われることが多いが、経済効果という意味では、貯蓄されずに消費された方が短期的には望ましい。
このように考えると、「貯蓄から投資へ」の次の「投資から消費へ」のフェーズはなかなか訪れないかもしれない。
個人消費の増加によって経済効果が現れるのは、家計のポートフォリオの収益性が高まることによって将来不安がなくなり、投資熱の背景にあった将来不安が解消されるタイミングとなる……とすれば、かなり先のことになりそうである。
老後のための「消極的」投資
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