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「逮捕って何」と聞かれて正しく答えられますか  知っているようで知らない事件報道の裏側

東洋経済オンライン / 2024年5月17日 8時30分

ところで、先ほどの憲法33条の「何人も令状がなければ、逮捕されない」という一文をもう一度よく見てみてください。何か気づきませんか? 

実はこの文には「誰に」という部分が抜けているのです。

どういうことでしょうか。これは、今、この本を読んでいる皆さんも泥棒を逮捕することができるという意味なのです。

あなたはコンビニエンスストアで万引をする男を目撃してしまいました。男はそのまま出て行ってしまいそうです。警察を呼びたいところですが、あたりに交番はない……。そこで、持ち前の正義感を発揮し、店から出たところで男に声をかけます。

男はびっくりした顔であなたを見ましたが、観念して「やりました」と言い、かばんに入れた商品を見せました。この場合、犯罪を見つけたあなたが男を逮捕することができます。逮捕状は必要ありません。これが「現行犯逮捕」です。警察官以外の人が逮捕しているので「常人逮捕」という言い方をすることもあります。

現行犯逮捕は憲法では例外の扱いですが、実際には意外に多いのです。

1981年の犯罪白書におもしろい統計が載っています。警察庁が全国で1979年1月から1980年6月までの間に全国で発生した金融機関強盗188件を調べたところ、検挙された128人の内訳は、警察官による現行犯逮捕が32.8%、一般人による現行犯逮捕が25.8%もあり、合わせて6割にも達しています。

話を万引犯に戻します。駆けつけたお巡りさんはニコニコ顔です。「ありがとうございます」「いえいえ……」「では、ちょっと署までご同行願えますか」「ちょっと待ってよ、何で私が警察に!?」。

刑事ドラマでは、署に同行されるのは犯人1人と相場が決まっています。しかし実は、泥棒を現行犯で捕まえて、お巡りさんに引き渡せば終わりではないのです。

これにはれっきとした理由があります。裁判が始まると、現行犯の場合でも、検察は裁判所に「現行犯人逮捕手続書」という書類を出さなければなりません。検察官はこの手続書に目を通してから公判に臨む必要があります。

手続書には逮捕について、そのとき、その場所の状況を詳細に書いておかなくてはなりません。そのため、逮捕した人間にもしっかりと事情聴取する必要があるのです。

緊急逮捕も逮捕状はいらない

通常逮捕と現行犯逮捕の違いをお話ししてきましたが、このほかに緊急逮捕というものがあります。緊急逮捕も逮捕状がいりません。

ある日の深夜、民家が全焼しました。警察官が駆けつけたところ、目撃者が現れました。

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