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JR東海「リニア」、静岡県知事交代でも残る難題3つ プロジェクトを左右する「工期・資金・人材」

東洋経済オンライン / 2024年5月21日 7時0分

『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』などの著書がある小林一哉氏は、赤石断層(赤石山脈の西側を走る断層)の存在を「やっかい」と指摘する。「いくつか破砕帯(砕かれた岩が一定の幅を持って帯状に連なっているもの)があるため、先進抗などを掘る際に大量の水が出る可能性はある」と話す。

「7兆円で足りるのか」と現場でざわつく

難題の2つ目は資金の問題だ。「お金は大丈夫か。7兆円で足りるのか」。JR東海の現場では目下、このような懸念の声でざわついているという。

JR東海は工事費の見通しを7.04兆円としているが、これは2021年4月の公表時点までの物価を基に算出している。公表後の3年間でコンクリートや鉄筋などの資材、そして作業員の労務費が一段と高騰している。

JR東海は「あらゆる観点からコストダウンの可能性を探る。技術のブラッシュアップや営業線の運営・保守のさらなるコストダウンにも取り組む」としている。しかし、超大手ゼネコンが頭を抱える資材高などの影響をどこまでカバーできるかは不透明だ。

資金の問題としては、財政投融資の返済における懸念もある。JR東海は低利で3兆円の融資を受けており、この返済が2046年ごろから始まる。同社は10年程度かけて返済する計画だ。

仮に、リニアの全線開業が10年遅れれば、稼ぎ頭の東海道新幹線で得た利益を内部留保する期間が10年伸びることになる。その点はJR東海として有利に見える。一方で返済のタイミングは、まだ工事資金が必要な時期と重なることも考えられる。

状況によっては、金融機関の融資などによる、さらなる資金調達が必要になってくるかもしれない。

関連部署での退職者問題も悩ましい

3つ目の難題は人員確保の問題だ。JR東海には、中央新幹線推進本部などでリニア工事に携わっている人員が、2023年7月時点で出向社員を含めて1870人いる。

2023年度は電気系統と機械系統を中心に約60人を増員した。2024年度も約60人の増員を計画する。ところが「辞める人がけっこういる」(JR東海関係者)という。

もともと、建設業界はきつい仕事であることなどが敬遠され、若者の流入不足が問題視されている。JR東海もここ数年、リニア工事の本格化を見据えて、建設関連の人員を厚めに採用してきた。ただ、「電気系統などの自己都合退職者は年間100人単位に及ぶこともある」と、同社の関係者は明かす。

JR東海の広報は、「退職者等について当社から公表している以上の回答はいたしかねます」とコメントする。

JR東海は新卒採用だけでなく、工事計画、設計・施工管理指導、用地協議などで即戦力となる人員のキャリア採用を積極化する構えだ。この先、工事進捗に応じて人員を適切に配置できるのか、気になるところだ。

リニア事業は国家的プロジェクトという側面だけでなく、JR東海の経営戦略としても重要な位置づけにある。3つの難題をクリアして、東京―大阪を1時間強で移動できる輸送ルートを完成させることができるのか。JR東海の胆力が試されるのはこれからだ。

梅咲 恵司:東洋経済 記者

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