裏金事件再発防止の法改正で「与党内対立」の混乱 自民独自案にも批判噴出、会期内成立に暗雲
東洋経済オンライン / 2024年5月21日 8時30分
終盤国会の最大の焦点となる巨額裏金事件を受けた政治資金規正法改正を巡り、岸田文雄首相(自民党総裁)が窮地に追い込まれている。いったんは与党案取りまとめで合意した公明党が、土壇場で自民との共同提出を拒否したことで、「与党内対立」が露呈したからだ。
慌てた岸田首相(自民総裁)や茂木敏充幹事長ら自民執行部は、やむなく5月17日に党独自案をまとめて国会に提出、これを受けて同22日から衆参の政治改革特別委員会での法改正を巡る与野党協議が本格化する。ただ、この自民案には野党だけでなく与党内からも「極めて不誠実な内容」(閣僚経験者)との声が噴出しており、政権の命運も懸けて早期決着を目指す岸田首相は、厳しい対応を迫られることになる。
法改正の具体的内容について足並みそろわず
その一方で、法改正の具体的内容については、野党側も足並みがそろっておらず、会期末が1カ月後に迫る中、与野党双方に「会期内決着は困難」(公明党幹部)との見方も広がる。その場合、政府は会期を延長せざるをえないが、これには岸田首相がなお執念を燃やす会期末解散の可否が絡むため、終盤国会での政局大混乱の要因にもなりかねない。
しかも、そのこと自体が「与野党双方が裏金事件再発防止のための法改正より、政局的対応を優先する異常事態」(政治ジャーナリスト)ともなり、裏金事件に対する国民の政治不信をさらに拡大させることは避けられない。規正法改正での拙劣な対応もあって支持率低迷が続く岸田政権にとって、「近い将来、破れかぶれ解散か早期退陣かの重大な選択を迫られる」(自民長老)ことも想定され、政局は会期末に向け緊迫化しそうだ。
今回の規正法改正を巡る与党内調整では、大型連休明けから岸田首相が自ら陣頭指揮する形で、公明の説得工作に腐心した。しかし、山口那津男同党代表は最終調整の場となった5月13日の政府与党連絡会議で、「現状では与党案の法案化は困難」と宣言、野党との協議先行を求めた。
「同じ穴のムジナ」批判を恐れる公明
公明が自民との共同歩調を避けた背景には、「法改正で安易に自民と妥協すれば、同じ穴のムジナとみられる」(幹部)との強い危機感があったとされ、「与野党協議を優先した形で決着させないと、国民の批判をかわせない」(同)との思惑からの対応だったことは間違いない。
そうした状況を受けて自民がまとめた独自案は①パーティー券の公開基準額を現行の「20万円超」から「10万円超」に引き下げる②党から50万円超の政策活動費を受け取った議員は項目別の支出額を党の収支報告書に記載する――などが主な内容。注目された政治資金パーティーに関する「公開基準額」については、当初から「5万円超」を主張した公明に対し、自民側は「受け入れられない」として折り合わなかった結果だ。
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