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ロジスティード、アルプス物流「高値買収」の真意 宅配便大手のヤマトHDは2次入札で途中敗退

東洋経済オンライン / 2024年5月22日 7時50分

この売却劇は、ロジスティードを昨年3月に買収したKKR抜きにはなしえなかった。なぜなら、売却先である産業ファンドを運用するKJRマネジメントは、KKRの完全子会社だからだ。いわば売り手も買い手もKKRの関与先だった。

産業ファンドは文字どおり倉庫や工場、研究所といった産業用不動産への投資に特化している。KKRからすれば、PE(プライベート・エクイティー)投資を通じて取得した企業が保有する不動産を切り離し、傘下のREITが受け皿となる相乗効果を描ける。

「アルプス物流が保有する施設も、産業ファンドが受け皿となるだろう」。ある投資ファンドの幹部はそう見る。

トラックドライバーの残業規制の導入による「2024年問題」を背景に、物流業界の再編が加速している。物流と不動産という2つの物差しで企業価値を測れるKKR・ロジスティード連合が他社を圧倒する買収提案で業界再編を優位に進める可能性がある。

反面、買収攻勢で割を食いかねないのは、不動産の出口戦略を描きにくい独立系の物流会社だ。

複数の関係者によれば、ロジスティードの2次入札に残った3社のうち1社は、宅配便大手のヤマトホールディングスだった。

「何としてでも取れ」。ヤマトにとって、今回の入札は長尾裕社長肝煎りの案件だった。

2月に公表した中期計画では、2027年3月期に向けてM&Aによる積み上げ枠として営業収益で4500億円、営業利益で400億円を見込んでいる。アルプス物流はその枠を埋める有力候補だったのだろう。だが、ロジスティードが提示した価格には太刀打ちできなかった。

ヤマトが食指を伸ばした理由

ヤマトは以前から3PL(倉庫での保管から配送など物流業務の一括受託)事業の強化に意欲を見せている。2016年にロジスティード(当時は日立物流)がSGホールディングスと資本業務提携を結んだ際、ヤマトはロジスティードの買収に興味を示していたという。

宅配便のビジネスは成長しているが、法人の大口顧客を獲得しても、逆に値引きで収益性が下がることもある。倉庫を活用する荷主を開拓し、着実に利益を積み上げられる3PLの強化を狙っていたわけだ。

ヤマトは現在、全国に110カ所ある倉庫と既存の幹線輸送、配送のネットワークを活用した3PLに力を入れている。アルプス物流が各地に物流拠点を抱える点は魅力だったと考えられる。

対抗TOBを仕掛けるなど、ヤマトに打ち手がないわけではない。しかし、ヤマトの決算は前2024年3月期まで3期連続の営業減益と苦戦が続く。異次元の買収価格に、さらに上乗せする余裕はなさそうだ。

「(経営・財務戦略などが)KKR及びロジスティードの知見とリソース並びにKKRの日本市場への強いコミットメントと豊富な実績に裏付けられたものであると判断した」――。

アルプス物流は5月9日の発表文において、売却先にロジスティードが選定された一因にKKRの存在を挙げた。投資ファンドを後ろ盾に持つロジスティードが、業界再編の台風の目となる可能性がある。

一井 純:東洋経済 記者

田邉 佳介:東洋経済 記者

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