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物流業界で異例の「買収合戦」突入か、佐川も名乗り 丸和の"同意なき買収"は株価高騰で視界不良

東洋経済オンライン / 2024年5月22日 7時30分

丸和HDの和佐見社長は単独ではなく、多くの企業で協力してデジタル投資や効率化を進めるべきという考えを持つ。そこで数年越しの構想を打ち切るのではなく、TOBで提案が妥当かどうか、C&F株主に是非を問う形を選んだ。

これまでC&Fは、特別委員会を設置して丸和HDの提案を検討。公開で質問状のやりとりも行ってきた。しかし現在のところ、TOBに対しては意見を「留保」している。複数の対抗提案があり、比較して検討したうえで改めて意見を表明するためだ。

4月には9社から対抗提案の意向表明書を受領し、5月1日までに4社から法的拘束力のある提案書を受領した。その1社がSGHDだったわけだ。

参入障壁の高い低温物流は成長期待

対抗提案が複数寄せられた背景には、低温度帯の物流の成長余地がある。近年、冷凍食品のマーケットは拡大基調だ。ニチレイフーズの推計では、2018年度の5600億円から2023年度は7600億円に拡大する見通しだ。低温物流市場も2022年度は前年度比3.6%増の1兆7724億円(矢野経済研究所調べ)、2025年度には1兆9157億円に拡大する予測だ。

C&Fは冷凍食品の物流を担うヒューテックノオリンと、冷蔵食品を扱う名糖運輸が統合した会社。低温物流にはつねに温度管理を行うための専用設備が必要で、参入障壁は高い。

また、同社は業界では珍しく、自社ドライバーを多く抱える。3月時点でドライバーは4103人だ。正社員は3005人、ほかは契約社員で、正社員化を進めている。トラックも2872台を数える。

ここから先のTOBは、極めて見通しづらくなっている。そもそも、丸和HDの買い付け価格である1株3000円もかなり踏み込んだ水準だった。基準日の3月19日終値2040円に47%超のプレミアムを付けた買い付け価格とし、買収総額651億円超を想定していた。

ここ3年のC&F株価は、2000円を下回って推移してきた。2015年の上場以来、3000円台をつけたことはなく、PBR(株価純資産倍率)も1倍割れが常態化していた。業績は安定しているものの、明確な成長はできていない。丸和HDを上回る額を提示をする対抗馬が出てきたとしても、物流事業での投資回収はかなり難しいものになるだろう。

一方でC&Fは、各地に自前の物流センターを保有している。2023年3月末時点での土地の簿価は約170億円ある。投資ファンドが流動化を視野に、含み益を勘案した提案を打ち出す可能性もありそうだ。

TOBの行方は混沌

丸和HDの和佐見社長は5月13日、決算説明会でTOBについてこう語った。

「(1株)3000円以上で買う同業者は少ないのではないか。同業者なら採算が合うか合わないかよくわかると思う。ファンドは関係なく、持っているものをすべてお金にすれば済むから、まったく手法が違う。われわれはそこで働く皆さんを大切にする、幸せにする責任がある。だから王道を進む。よく見ていてください。いずれにしても、やるかやらないかというのは相手次第です」

丸和HDがこのまま押し切るのか、それともSGHDなど、同業者が対抗馬として参戦するのか、あるいは投資ファンドが名乗りを上げるのか。物流業界で起こった同意なき買収、C&Fの争奪戦は視界不良の状態だ。

田邉 佳介:東洋経済 記者

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