1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

カルビー「本気の全社DX」で判明した意外な最適解 全社データをつなぐキモは現場社員のノウハウ

東洋経済オンライン / 2024年5月23日 7時0分

さまざまな改善活動を通して気づいたのは、現場のスタッフが主導する重要性だ。「他社からデータ人材を送り込んでも効果はない。現場がわかる社員が課題意識を持ってデータを扱えるようにする。時間がないと困っている社員も多いが、やる気を引き出してDXを軌道に乗せていく」と森山氏は語る。

ノウハウはほかの工場にも展開し、最終的に2025年に稼働予定の「せとうち広島工場」に結集する予定。しかし湖南工場のメンバーは、なぜか新工場をライバル視して「広島工場を抜く」と意気込んでいるという。ITベンダーから教わる最初のフェーズを経て、社員自らが最適解を考えるようになった。

生産現場にとどまらず、マーケティングも進化している。ポテトチップスやじゃがりこなどのブランド別ではなく、ポテトチップスの「うすしお味の60グラム」「コンソメパンチの80グラム」など、単一商品ごとの費用構造を算出できるよう見直した。

商品別に、ばれいしょなどの原材料費、製造経費、間接コスト、値引きコスト、販売店に支払うリベート、社内拠点間の物流コストまで項目ごとにガラス張りにすると、社員もつかめていなかった特徴と課題が浮き彫りになってきた。今後は工場のデータと単品のコスト構造を紐付け、改善を進める予定だ。

全社最適のシミュレーションを探る

現在は、さまざまなデータを取り込んだ、シミュレーションツールの構築に着手している。「特定部門だけでなく、一気通貫で全社最適のオペレーションをやることがポイントになる」と田邉和宏CFO(最高財務責任者)は語る。

たとえば、かっぱえびせんを2つの工場で作っているとすると、1つの工場で生産したらコストがどう変わるかをシミュレーションできるようになる。物流費の上昇と生産コストの低減を天秤にかけて、どちらが効率的かを試算できる。

複数シナリオを比較することで、緻密なマーケティングが可能になる。これにより経営の意思決定を、生産から物流、営業、マーケティングまで、全社的な状況を見て素早く判断できるようになる。

「シミュレーションツールは仮運用を進めながら2025年にかけて構築し、2026年には実際の戦略立案に生かしていく」と、S&OP推進部の大江智之部長は語る。

経営トップも直接、社員に呼びかけている。江原信社長は昨年、約60回のスモールミーティングを開催し、国内外1500人以上の社員と対話してきた。社員から現場の悩みを聞きつつ、DXの方針なども説明している。

江原社長は足元の事業環境について、原材料コストの上昇や円安、物流問題、消費者のマインド変化など、さまざまな課題があると分析する。その上で「現在の収益構造を改善するには、販売、稼働、供給の最適化、原材料調達から販売までのプロセスの可視化が求められる。スピーディーな意思決定やアクションにつながる仕組みを回していきたい」と意気込む。

現場では今も、さまざまなアイデアやデータが飛び出し、経営はそれをすくい上げようとしている。より安定的に多くの商品を手に取ってもらうためにも、カルビーの変革はこれからが本番を迎える。

田邉 佳介:東洋経済 記者

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください