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任天堂の岩田社長が「WiiのCM」でNOを告げた相手 「これはアメリカで成功します」私は断言した

東洋経済オンライン / 2024年5月24日 8時30分

私は広告代理店レオ・バーネット・ワールドワイドと共同で手掛けたこのCMを支持し、出来上がったものを事前に岩田氏にも見せていた。ところがCMを公開する1週間前になって、岩田氏は自宅にいる私に電話をかけてきた。

「レジー、私は京都でみんなにCMを見てもらっているが、心配なことがある」

日本の任天堂の経営陣は、CMに出ている日本人ビジネスマンの、西洋の家族との接し方が馴れ馴れしくて、くだけすぎていると感じていたらしい。

「レジー、CMを変えてほしい」

任天堂本社のチームが指摘した問題点は、CMの成功要素を真っ向から否定するものだった。CMを変えることは、これまでの仕事を否定することになる。これまで私がCMに携わってきた経験からいっても、この指摘は間違っている。

このCMはこれまでの殻を突き破り、インパクト絶大だ。この問題についてあれこれ話し合う中で、「過剰な馴れ馴れしさ」がアメリカ、カナダ、ラテンアメリカでは気にされないと考える理由を私は説明した。

話し合いが煮詰まる中、私は言った。

「ミスター・イワタ、あなたが私を任天堂に呼んだのは、任天堂の世界最大の販売地域に強力なマーケティング担当者が必要だったからですよね。あなたは私の業績をご覧になってきたし、私を昇進させてくれました。どういう結果が出るのか自信がありますから、お任せください。このCMはアメリカで成功します」

しばらく間が空き、それが永遠に続くかのように重く感じられたときに、岩田氏は口を開いた。

「わかった、レジー。君を信じるよ。前に進めてくれ」

結果的に、CMは私の支社が実践した他のマーケティング戦略と併せて成功した。私たちは世界の任天堂支社の中で、最もWiiを成功させることになる。

自分の信念を貫くためには?

自分の信念を貫くことと、頑固な態度を通すことは紙一重の違いだ。自分は本当に一連の行動を正しいと信じているのか、それとも意固地になっているのかを見つめ直さなければならない。困難な判断や複雑な決断を下す際は、自分のモチベーションを知ることが特に難しくなる。

まずは自分に正直になること。議論において自分の正しさを証明したいとか、勝ちたいという欲求と、自分の確固たる信念とを分けて考える。本当にそれが正解だと思ってやろうとしているのか。他の誰かが同じことを提案しても、ちゃんとこれを支持するだろうかと、自問してみるといい。

今の問いにどう答えていいのかわからなければ、じっくり心を開いて相手が言う別の観点に耳を傾けてみる。気になった点ははっきりと質問する。相手の言葉を繰り返して、自分がちゃんと話を聞いているのだとわかってもらう。自分が問題点を理解していること、相手の考え方にも一理あることを示してあげる。

自分の信念を貫こうと決めたのなら、できる限り説得力のある材料を集めて、自分の観点を述べる。ポイントを理解してもらうために、データや他の産業から得たサンプル、自分の経験を駆使する。話を止めて相手に質問の余地を与える。論破してやろうという態度を取ってはいけない。

共通の立脚点を探す。折り合えるところが見出せればそれを伝えて、残りの際立った問題点に集中する。時にそれは取るに足らない問題であることがわかり、合意の上で次の段階に進んでいけることもある。

そして時には断固たる姿勢を取ることもお忘れなく。

前編記事はこちらから

【前編】元米任天堂社長と岩田聡氏との知られざる友情

レジー・フィサメィ:アメリカ任天堂元社長兼COO

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