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「容疑をほのめかす供述をしている」の意味とは  今すぐ誰かに話したくなる事件報道の裏側 

東洋経済オンライン / 2024年5月24日 10時0分

容疑は認めるけれども、供述調書という形に残るようにはさせない。こうなると、警察としては困ったことになるのです。

逮捕された容疑者は供述調書を取られます。供述調書は大別すると「員面調書」と「検面調書」の2種類があります。どちらの調書も正式に裁判所の公判廷に提出されます。乙号証と呼ばれ、罪状の確定や情状に大きく影響する大事な証拠です。

ところが、暴力団関係者の場合、多くの場合は犯罪慣れしていますし、しかも上層部の組長を巻き込んだ事件だったりすると、下手にペラペラとしゃべろうものならシャバに出たあと命すらあやうくなりかねない……。そう考えて、調書を巻かせないよう画策することがあるのです。

供述調書は、自白が本人の意思に基づいてなされたかという「任意性」と、供述が事実かどうかという「信用性」の二つがそろっていないと証拠価値がありません。ですから調書の末尾に容疑者が氏名を自書(サイン)するのが普通です。そこで、サインを拒否し、自分の供述に任意性を持たせないようにするのです。

もっとも、これを延々と続けて、ほのめかしを続けるのは骨が折れます。最終的に全面的に自供するケースもあれば、否認に転じたり、黙秘したりすることもあります。いずれにせよ逮捕された初期の段階で、口頭では容疑を認めるものの、書面の形で証拠として残る形にならない、あるいはさせない状態になっているのが、容疑をほのめかす典型的なパターンだと考えて差し支えないでしょう。

容疑者の「自称」とは?

ほのめかしと多少関連しますが、逮捕のニュースで「自称・不動産業の〇〇容疑者は……」と報じられることがありますね。

容疑者が逮捕され起訴されて、裁判所に舞台が移ると、検察官が冒頭陳述というものを読み上げます。その際、「身上・経歴」という項目があり、容疑者(起訴されたあと裁判になると被告)の生まれ、育った地方、環境、家族構成、学歴、職歴などが明らかにされます。

このことを想定して、警察は住民票で住所を確認し、身上経歴に関する供述調書(身上経歴書)に謄写・添付したり、会社員ならその会社から在籍証明書のようなものをもらったりします。自営業者ならば、登記簿謄本を添付するのが普通です。

ただ、逮捕した時点では、こうした手続きが間に合わないことがよくあります。しかもたとえばブローカーのように、仕事の実態がよくわからなかったり、日ごろブラブラしているように見えて、一獲千金的に大商いをすることがあったりする人物の場合、無職なのか職業があるのか、警察としても判断に迷うときがあります。

そうした場合、容疑者が取り調べで「自分は不動産業です」と言ったとしましょう。会社のホームページも存在しないし、登記簿謄本をとっても該当がないが、まったく事業実態がないわけでもなく、近所の人も「不動産をやっているらしいですよ」程度のことは言っている……。裏付けはまだ取れていないが、とりあえず本人がそう言っているから「自称・不動産業」としておくか、となるのです。

三枝 玄太郎:フリーライター、元産経新聞記者

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