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翻訳でも生成AI台頭?「DeepL」が見いだす勝ち筋 翻訳の「一貫性」で生成AIサービスと差別化

東洋経済オンライン / 2024年5月25日 7時40分

DeepL翻訳では、元のソース言語(入力する言語)の中身を正確に理解し、それを翻訳して別の言語に置き換える際に、翻訳そのものの技術と、翻訳された文章をより自然なものにするための技術双方のトレーニングを行う。学習トレーニングでは、出てきた言葉1つひとつを人の目で評価するなど、多大な時間とお金を投資している。この人を介した作業によって高い精度を担保しているのだ。

ただ機械翻訳のビジネスも競争が激化していることは否めない。最新のAIモデルを発表したChatGPTだけでなく、Googleの「Gemini」などの生成AIサービスも、翻訳精度を高めてきているように映る。

勃興する生成AIサービスにどう対抗していくのか。クテロフスキーCEOは、とくにビジネスシーンの機械翻訳において大切なのは「一貫性だ」と強調する。

いつ打っても一字一句、同じ訳語に

一貫性とは、何をいつ打っても、必ず正確な答えが返ってくるということ。例えば、ある英文を入力し日本語に翻訳する際、DeepLではその英文をいつ打っても、一字一句同じ翻訳結果が返ってくる(オプションとして、訳文を数種類提示し、そこから選択することも可能)。

一方でChatGPTなど他社のLLMによる翻訳は、毎回ニュアンスは近いものの、一字一句同じ訳語が出てくるわけではない。

「われわれがAIに期待しているのは、大きな間違いをせず、(打つタイミングによって)全然違う回答をしないこと。AIも人も100%正確ではないし、間違えることもあるが、その偏差がある程度狭くないとビジネスシーンでの活用は難しい」(クテロフスキーCEO)

このような観点から、日本でも生成AIツールとDeepLを用途により使い分けている企業が多いという。

今後DeepLが注力するのは、顧客のユースケースをより見極めたサービスの展開だ。

AIツール全般にも言えることだが、ビジネスシーンにおける翻訳ツールの用途はさまざまだ。DeepLも、メールのやり取りの翻訳に使われることもあれば、法務の契約書などフォーマルな文書の作成に活用されることもある。

2023年7月にアジア初の拠点として活動を始めた日本法人の役割は、顧客である日本企業から実際にどのような用途があるかを聞き出し、それをDeepLとしてどう具体的に解決できるかを考える点にあるという。

音声をかけ合わせたサービスの研究も

例えばカスタマーサポートであれば、APIでシステムの中にDeepLの機能をダイレクトに組み込んだほうがいいケースもある。一方で論文を大量に読む研究員などは、自身のパソコン上でDeepLのアプリを立ち上げてpdfを翻訳するほうが使いやすいという人もいる。こうした個々の顧客のユースケースに沿って、サービスの提案・拡充を進めていく方針だ。

AI技術を駆使したサービスの投入が相次ぐ翻訳市場についてクテロフスキーCEOは、「われわれが市場に出たときからGoogle翻訳が存在していたように、すでに競争環境はあった。競争があり続けているという点では今も変わらないし、だからこそ市場が前進する」と淡々と話す。

将来的には、DeepLの品質に音声機能を掛け合わせ、ビデオ通話などでリアルタイムに翻訳するサービスの研究・開発にも力を注ぐ。群雄割拠の機械翻訳ビジネスにおいて、独自のポジション確立を狙うDeepLの挑戦は今後も続きそうだ。

武山 隼大:東洋経済 記者

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