ブラザー工業が攻めきれず、「同意なき買収」断念 狙われた側のローランドDGは巧みな試合運び
東洋経済オンライン / 2024年5月26日 8時0分
産業印刷機中堅のローランド ディー.ジー.(DG)をめぐる買収合戦が幕を閉じた。ローランドDGのMBO(経営陣による買収)を受け、対抗TOB(株式公開買い付け)を予告したブラザー工業だったが、5月16日にあっさり提案を取り下げた。
【写真】タイヨウのブライアン・ヘイウッドCEOは「最初に出した5035円がフェアな価格だと思っている」と語った
ローランドDGのMBOは、アメリカの投資ファンドで大株主のタイヨウ・パシフィック・パートナーズと組んだものだ。今年2月からタイヨウによるTOBが始まった。
ブラザーの対抗TOBは「同意なき買収」となるうえ、投資ファンドに事業会社が挑む構図だった。そのため市場の関心を集めたが、終わってみると目を引いたのはローランドDGの巧みな試合運びだった。
「価格の戦い」にしなかったDG
「ローランドDGは『ディスシナジー』を主張の前面に出したが、『自分たちの価格のほうが高い』とはあえて主張しなかった。『価格の戦い』にしなかった」
そう述べるのは、企業の買収防衛策などに詳しいIBコンサルティングの鈴木賢一郎社長だ。
ローランドDGが訴えたディスシナジーとは、印刷機の中核部品に当たるインクジェットヘッドの供給に関することだった。同社は使用するヘッドの8割をサプライヤー1社から調達。残りはブラザーと別のサプライヤーからそれぞれ1割ずつ仕入れている。
ヘッドの8割を供給しているサプライヤーとブラザーは競合に当たる。ブラザーの傘下に入れば、新製品の開発状況を共有してくれるような現在の関係を維持してもらえず、業績に大きな影響を及ぼす。そのようなローランドDGの主張は、関係者の耳目を集めた。
他方でローランドDGは、タイヨウからTOB価格の引き上げを取り付けた。1株5035円だったタイヨウのTOB価格は4月26日に5370円へと引き上げられ、ブラザーの示した5200円を上回った。
このときブラザーが「『価格引き上げはおかしい』と主張すべきだった」と、鈴木氏は指摘する。
勝負どころを誤ったブラザー
マネジメントバイアウトの略であるMBOは、その言葉のとおり、経営陣が関与する買収だ。非公開化後のローランドDGには現社長が出資する予定になっている。またローランドDGの取締役会は、タイヨウが最初に提示した5035円でのTOBに賛同し株主に応募を推奨していた。
東洋経済の取材にタイヨウのブライアン・ヘイウッドCEOは、「最初に出した5035円がフェアな価格だと思っている」としたうえで「マーケットには競争があるから」とTOB価格の引き上げの正当性を主張した。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
株主に「経営陣退陣」を迫られた2社が残した宿題 主導権は会社側が確保するも"一件落着"ならず
東洋経済オンライン / 2024年7月4日 8時30分
-
永谷園、スノーピークも上場廃止 好調企業で「上場離れ」が相次ぐワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月26日 8時20分
-
AZ-COM丸和がC&Fロジの買収を事実上断念へ
財界オンライン / 2024年6月21日 15時0分
-
NCホールディングスに対する公開買付に関するGlobal ESG Strategyの見解
PR TIMES / 2024年6月13日 16時45分
-
永谷園HDがMBO実施、非公開化へ 新体制で企業価値向上
食品新聞 / 2024年6月10日 9時17分
ランキング
-
1今度はなんのコラボ? マクドナルドのX、次回の「ハッピーセット」のヒント画像公開...期待高まる
J-CASTニュース / 2024年7月4日 16時49分
-
2妻に先立たれた65歳、年金約17万円・おひとり様シニアを襲う<老後破産へのカウントダウン>
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月3日 9時0分
-
3宝くじで「10億円」当選! でも実際に“手では持てない”って本当?「1000万円」なら片手で持てる? 元銀行員の筆者の経験もあわせ解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月4日 4時40分
-
4「衝撃でした」従業員も驚き「川崎重工業」の裏金問題 海自隊員らに飲食費など提供か 共同作業で懇親会も 規模は十数億円の可能性
MBSニュース / 2024年7月4日 11時45分
-
5子供いない夫婦「相続で失敗しない」1つの方法 家庭裁判所で「調停」が必要になるケースもある
東洋経済オンライン / 2024年7月4日 8時20分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください