魚の獲りすぎをやめないと、日本の魚は枯渇する 2050年に漁獲量ゼロ?墜ちた漁業大国ニッポン
東洋経済オンライン / 2024年5月27日 8時0分
ほかにもある。マイワシといった固有の魚種の激減や、近年では地球温暖化に伴う海水温上昇などもそうだ。「サンマが減ったのは公海上で中国や台湾の大型漁船が大量捕獲したからだ」。ある漁業協同組合の幹部は外国漁船による乱獲を理由に挙げる。
主要魚種で減った代表がサケ、サンマ、スルメイカだろう。2022年のスルメイカの漁獲量は3.1万トンだが、これは20年前の10分の1。逆に増えたのはブリくらい。ホッケのように”サイズが小さくなった”といわれる魚種もある。
「魚を自国で獲れないなら、他国から買えばいいのでは」との反論があるかもしれない。実際にサケ・マス類はチリやノルウェー、カツオ・マグロ類は台湾、エビはベトナムなど、日本の輸入先はバラエティーに富む。
世界の水産物価格は上昇トレンド
とはいえ、世界の水産物価格は、ずっと上昇トレンドにある。魚離れで、日本人の1人当たりの年間購入量は減っているが、円安もあって、日本の輸入金額は増え続けている。片や1人当たりの消費量では、過去50年間で中国は50倍に、インドネシアは4倍に膨張した。日本が中国などに買い負けることも珍しくなくなり、より多くの金額を支払わなければ、魚は手に入りにくくなったのだ。
確かに日本の漁獲量減について、外部要因が影響してきたことは否めない。しかし、日本自らが招いた過ちもある。水産庁の魚谷敏紀・資源管理部長は「しっかり資源管理をしていれば、今のような状況にはなっていなかった」と振り返る。
世界は資源管理の時代に突入した
水産物のような生物資源は、獲りすぎると資源量が減り、獲るのを抑えるとまた増え出すとされる。つまり、生物の自然増と釣り合ったペースで漁獲をすることが、漁業を永続させるのには欠かせない。だが日本の場合、魚の“獲りすぎ”を抑えられず、これまでは資源管理ができていなかった。
一方、ノルウェーのような漁業先進国は、政府主導で厳格な資源管理を行っている。1996年に発効した国連海洋法条約を受け、翌97年から日本でも実質的に運用が始まったのが、「TAC」(漁獲可能量)制度だ。魚種ごとにあらかじめTACという“枠”を設けて、実際の漁獲量をそれ以下に抑制しようとする考え方である。最初はサンマやスケトウダラなど、8魚種をTACに設定した。
ただし、実績を見る限り、TACのハードルはかなり甘い。
枠を高めに設定することで、漁獲を抑えなくても悠々と守れてしまっている(途中で増枠するケースもある)。実際の漁獲量をTAC(漁獲可能量)で割ったのが”消化率”だが、どの魚種も無理なく、TACの枠内で消化できている=達成できているのが実情である。獲りすぎは抑えられていない。
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