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任天堂の岩田社長とのやり取りで活用した"柔術" 仕事における「相手を理解すること」の重要性

東洋経済オンライン / 2024年5月28日 9時0分

病室に入ると、岩田氏が病院のガウンを着て満面の笑みを浮かべて立っていた。私は岩田氏を見ていつも通り、握手をした。そのまま打ち解けたプライベートな会話に入り、彼の回復具合について聞いた。元気そうだ。顔は赤みがかっていて健康状態は良好であるように窺えた。

小柄な奥さんを紹介し、英語がまったく話せない彼女の通訳を務めてくれた。20代くらいの娘さんも紹介してもらった。彼女は私と会えてすごく喜んでくれた。「レジー、娘は君の大ファンなんだ」と岩田氏。「本当ですかミスター・イワタ。ご家族の中に私のファンがいるなんて」と私は返した。

岩田氏はクスクス笑って、通訳をしてくれた。おかげで、娘さんと私は軽い冗談を交わすことができた。彼女は携帯電話を取り出して、この病室で一緒に写真を撮ってくれませんかと言う。これを聞いて岩田氏は笑い、お願いできないかと私に言うのだった。

私はもちろんいいですと答えたが、問題が1つあった。私は背が高いが彼女は小柄なため、私たち2人をフレームに収めるのが難しかったのだ。いたずらっぽい笑みを浮かべて目を輝かせ、岩田氏が助け船を出してくれた。娘さんの携帯を取ってカメラマン役を引き受けて、2人の写真を何枚か撮ってくれた。写真を見て彼女は満足げだった。

私は人間関係がもたらす力を信じている。岩田氏は私の上司だっただけではない。私のビジネスに対する洞察力を評価してくれただけではない。

彼は友人であり彼との友情があったからこそ私は任天堂で成功し、人生においても成功することができた。だからといって、ビジネスにおいてみんなと仲良くすべしということではない。つまり、相手をよりよく理解するほど、共同作業でより効率よく最大の成果を上げられるということだ。

友人との別れへ

私の中では、岩田氏の病室での楽しかったひと時の隣には、その1年後に開かれた葬儀の記憶が並んでいる。それは私の中に深く刻まれている。私たちは東京に着いてから別の飛行機で大阪に飛んで、そこから故人との別れがなされるお寺まで電車で行く計画だった。

これは異例のことで、いつもなら新幹線という高速の列車に乗って京都に行く。電車のほうが少し時間はかかるがより便の数が多い。いずれにせよ、故人との対面は当日の夜に行われ、翌日が葬儀ということで、一刻を争う状況だ。

今回はNOAを代表して、私を含む数人で一緒に旅をしている。私たちは飛行機のトイレで喪服に着替えた。飛行機が迫りくる台風のせいで激しく揺れていたため、私みたいに体の大きな人間には大変だった。

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