中国電池CATLが「フランス海運大手」と提携の背景 船舶の電動化などで協業、合弁会社設立も計画
東洋経済オンライン / 2024年5月28日 18時0分
世界最大の電池メーカーである中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は5月8日、フランス海運大手のCMA CGMとの提携契約に署名したと発表した。両社は船舶の電動化や物流車両、倉庫物流などの分野で協業を模索し、合弁会社の設立も計画している。
【写真】CATLが2023年1月に稼働させたドイツ工場(同社ウェブサイトより)
CMA CGMはコンテナ海運で(スイスのMSC、デンマークのA・P・モラー・マースクに次ぐ)世界第3位の巨大物流企業だ。保有船舶は620隻、運営航路は257ルートに上り、世界各地の420の港湾でサービスを提供している。
なお、CATLはCMA CGMとの提携に関して、上記以上の具体的な情報は公表していない。
EV以外の用途開拓を模索
CATLはEV(電気自動車)用の車載電池のトップ企業として有名だが、数年前からEV以外のモビリティ分野の用途開拓にも貪欲に取り組んでいる。
その代表例が電動船舶と電動航空機だ。同社は2022年11月、船舶の電動化を推進する子会社「寧徳時代電船科技」を100%出資で設立した。
また、2023年7月には電動航空機を開発する合弁会社「商飛時代上海航空」を、国有航空機メーカーの中国商用飛機(COMAC)と共同設立した。CATLは同年4月、電池セル単体のエネルギー密度が1キログラム当たり最大500Wh(ワット時)に達する「凝縮系電池(コンデンスドバッテリー)」を発表し、電動航空機への搭載を視野に入れている。
今回のCATLとCMA CGMの提携契約は、中国の習近平国家主席が5月5日から10日までフランス、セルビア、ハンガリーを訪問したのに合わせて調印された。習主席の欧州歴訪には、中国の企業家随行団の一員としてCATL董事長(会長に相当)の曽毓群(そう・いくぐん)氏が同行した。
曽氏は5月6日、パリで開催された中仏企業家のフォーラムに出席。その会場でスピーチしたフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、中国企業による積極的な対仏投資に期待を示し、次のように述べた。
「中国には世界が認める(高度な)専門技術が多数ある。例えば電池、EV、太陽光パネルなどだ。中国企業がフランスに進出し、事業を拡大するのを歓迎する」
攻めの経営で成長維持へ
CATLは(中国市場に比べて低かった)海外市場でのシェア拡大に邁進しており、なかでも(自動車産業が集積する)ヨーロッパは重要な戦略市場だ。同社は2023年1月にドイツの電池工場を稼働させたほか、ハンガリーでも大規模工場の建設を進めている。
世界の自動車市場では、ここにきてEV販売の成長の勢いに陰りが見られる。そんな中、CATLは攻めの経営を貫くことで、(競合メーカーから市場シェアを奪って)成長を維持する考えだ。
韓国の市場調査会社SNEリサーチのデータによれば、車載電池のグローバル市場における2024年1~3月期のCATLのシェアは37.9%。第2位の中国のBYD(市場シェア14.3%)、第3位の韓国のLGエナジーソリューション(同13.6%)に大差をつけて首位の座を守った。
(財新記者:安麗敏)
※原文記事の配信は5月9日
財新 Biz&Tech
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